研究課題/領域番号 |
19K03985
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池端 慶 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (70622017)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海底熱水鉱床 / 銅同位体 |
研究実績の概要 |
海底熱水鉱床は、有用元素が熱水溶液から沈殿、濃集して形成されると考えられているが、有用元素の起源や濃集機構に関しては、未だ良く分かっていない。海底熱水鉱床に広く存在する銅の安定同位体組成は、銅鉱床の成因の解明に有効な指標である。本研究では、海底熱水鉱床試料に含まれる銅の安定同位体組成を高精度で測定し、海底熱水鉱床の形成機構を探ることを目的とする。本年度は、沖縄トラフに加え、伊豆・小笠原・マリアナ弧及び周辺海域のいくつかのサイトで採取された試料(塊状硫化鉱物、熱水変質鉱物、火山噴出物など)中の銅鉱物や関連鉱物の種類や形態学的特徴、主要・微量元素化学組成などを実体顕微鏡、反射金属顕微鏡、顕微ラマン分光装置、誘導結合プラズマ質量分析計などを使用して確認した。顕微ラマン分光装置による主要粘土鉱物(モンモリロナイト、パイロフィライト、ディッカイト、カオリナイト、サポナイト)の分析条件の検討は、日本粘土学会参考粘土試料を使用して実施した(Ikehata et al., 2021)。 各種含銅鉱物の高精度銅同位体比分析法を確立するために、収集した天然銅硫化鉱物や関連する熱水変質鉱物の化学組成や物性を確認した後に、これらの試料を使用してメタルフリークリーンルーム内での前処理方法の最適化や同位体分析時のマトリックス効果の程度を把握することができた。その後、比較的分析が容易な実試料中の含銅鉱物の銅同位体比分析を開始し、銅同位体比を指標としてそれら含銅鉱物の銅のソースを識別することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画通りに沖縄トラフ以外の海底熱水鉱床の塊状硫化鉱物や関連する熱水変質鉱物、火山噴出物試料中の含銅鉱物などの基本的な岩石・鉱物学的記載を行い、それらの特徴について把握することができた。また、一部の銅鉱物や脈石鉱物中の銅の安定同位体比に関して、多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計を使用して測定するための前処理方法の最適化や分析時のマトリックス効果の程度を把握することができ、実試料の測定も開始した。しかし、一部の銅濃度が低い鉱物試料では、複雑なマトリックス効果を示したため、引き続き模擬試料などを使用して検討する必要があることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の銅同位体比の分析時に、複雑なマトリックス効果を示した銅濃度が低い鉱物試料の前処理方法の検討や分析条件の設定を、収集した天然の鉱物試料などを使用して引き続き実施する。また、本年度までに岩石・鉱物学的記載が終了している海底熱水鉱床試料に関しては、多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計を使用して高精度銅同位体比分析を実施し、得られたデータや先行研究のデータを総合的に考察して、海底熱水鉱床の形成機構を明らかにする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による様々な影響を勘案し、予定していた共同研究者との研究打ち合わせなどを中止したため、国内旅費の使用が減少した。また、購入を予定していた一部の消耗品について、他経費で購入することができたため、使用額が予定額を下回った。次年度使用額の使用計画としては、共同研究者との研究打ち合わせのための旅費などに充てる予定である。
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