研究実績の概要 |
令和2元年度は,引き続き,苫小牧市の沿岸低地において野外調査を実施した.この地域ではすでに17世紀前半の古津波が知られている(髙清水ほか,2007,2012). 本研究ではそれ以前の古津波履歴の解明を目指してより2地域において古い時代の地層の調査を実施する計画であった.しかし,北海道地域における新型コロナウィルスの感染状況が好転せず,年末に予定していた調査を実施できなかった.結果,ボーリング調査を次年度に持ち越さざるを得なくなった. 一方,苫小牧地域における17世紀津波堆積物の性状把握のための調査は海岸から約1.6 kmの範囲までに調査測線を延長し試料採取と分析を行った.総調査地点数は49地点である.各地点においてコアラーおよびハンディジオスライサーによって試料採取を行い,現地において地層の特徴を記載した.その結果,以下のことを把握した.(1) 設定した海岸に直交する測線において, 津波堆積物はおおよそ内陸へ薄層化,および細粒化すること. (2) 泥分含有量は内陸へ増加し, 津波堆積物中の砂泥成分密度が減少することで, 砂層から砂質泥炭層, 最終的には泥炭層中に砂粒が見られる層相へと変わること.(3) 津波は河川流路を横断することで河川堆積物を取り込み, 横断後の津波堆積物には取り込んだ粒子特性が現われること. (4) 津波堆積物分布は海岸線から約1633 mの地点まで確認できるが, 津波の遡上距離はこれをさらに上回る可能性があること.(5) 津波堆積物中の泥分含有量の増加および砂泥成分密度が低下するため,肉眼での識別が困難になるが, X線CT画像を用いることにより津波堆積物は識別可能であることである. これまでに一般的に行われている堆積物の性状把握の手法をさらに高度化するために,昨年度検討したCT撮影に最適化した撮影条件に従い,CT画像の取得を行い特徴把握をした.
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