研究課題/領域番号 |
19K03987
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
卜部 厚志 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (20281173)
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研究分担者 |
片岡 香子 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00378548)
高清水 康博 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (10446370)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 弥生の海退 / 射水平野 / 沖積層 / 古地理の復元 / 小竹貝塚 |
研究実績の概要 |
弥生の海退は,日本各地の海岸平野での共通した変動として考えられてきた.この変動の有力な根拠は,富山湾沿岸に位置する魚津埋没林の埋没過程の検討から示されている.一方で,各地の弥生の海退とその後の海進は,その年代や変動量が一致せず,地域の沈降運動やハイドロユースタティックな変動量を含む相対的な変動である可能性がある.そこで,本研究は,魚津だけではなく,富山湾沿岸の海岸平野の形成・発達過程から富山湾沿岸全体の海水準変動を復元することで,縄文海進のピーク時期と標高の復元も含めて,富山地域での弥生の海退現象の評価を行うことを全体の目的とした. 2019年度は,富山県の射水平野の内陸部の砂州の形成と潟端の遺跡立地を含めた古地理の復元による射水平野での最終氷期以降の海水準変動量等の検討を行った.射水平野沿岸部の沖積層の層序と年代については,沿岸部での最近の成果があるが,射水平野内陸側の砂州地形の発達過程や地形の形成年代は,明らかとなっていない.このため,既存ボーリングデータベースを活用して,沖積層の層序の概観を把握した上で,複数地点においてオールコアボーリング調査を行った. 掘削したボーリング試料は,これまでの沖積層研究で実施してきた分析方法と同様に基本的な層相の解析と古環境を推定するための分析,年代分析を行った.また,既存ボーリングデータベースの資料を参考に,層相の空間的分布を年代ごとに推定し,射水平野の古地理の復元を行った.この結果,約7200年前には,現在の海岸線付近に狭長な砂州が成立し,泥質なラグーンが成立していることや潟端の小竹貝塚立地時の古地理を明らかにした.堆積相の分布と年代から,この地域の縄文海進のピーク標高は,現在の海水準とほぼ同様であることが推定できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究計画と目的に対して,必要な地点でのボーリング調査やコア試料の解析を行うことができた.また,既存資料等の活用によって,射水平野の小竹貝塚立地時を含めた各年代の古地理の変遷を明らかにすることができた.これらによって,射水平野での最終氷期から縄文海進をへて,現在にいたる海水準の変化を推定することができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画のように,魚津埋没林近傍での埋没樹根の発見と沈降による埋没林の形成過程の立証を主眼に,ボーリング調査を行い地層の形成と海水準変動の関係を検討する.また,魚津埋没林地域は市街地のため,ボーリング調査の実施が困難な場合は,同様な沈降が示唆される黒部扇状地の海岸部でのボーリング調査を行い,地層の形成と海水準変動や沈降時期の検証などを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月よりの新型コロナ感染症の流行等により,研究分担者の研究の一部が完了しなかった.一方,分担研究者の担当研究は,次年度も通じた内容であり,研究計画全体としては予定通り進捗しているため,次年度の研究計画および助成金の使用計画に支障はない.
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