研究課題
2021年度はコロナ禍のため満足な野外調査を行うことができなかった.特に,氷河期に広く氷河に覆われたスイスアルプスの,氷河の荷重の徐荷後の山体重力変形地形の特徴の解明ができなかった.そのため,2021年度で終了する予定であった本研究を2022年度まで延長することとした.2021年度の研究成果として,地域性火山灰を利用した重力変形地形の活動年代の推定方法の確立が挙げられる.北アルプス南部の焼岳周辺には,焼岳の噴火活動に伴う火山灰が分布するが,約2300年前に活動した中尾火砕流に伴う火山灰は比較的広範囲に分布している.焼岳周辺の山体重力変形地形の線状凹地に堆積した火山灰と中尾火砕流堆積物に挟まれる火山灰,および日本周辺に分布する広域火山灰の特徴を比較した.その結果,中尾火砕流に伴う火山灰中の火山ガラスの化学組成および屈折率は,日本周辺に分布する過去10000年間の広域火山灰とは異なる特徴を持ち,明確に区別することができることが明らかとなった.このことは中尾火砕流に伴う火山灰が北アルプス南部における年代指標として利用できることを示している.今後は,焼岳起源のより古い火山灰との識別が可能か否かを明らかにする必要がある.日本ではあまり事例が知られていないスプレッド型地すべりの特徴を明らかにするために,福島県南会津郡下郷町の枝松地域にみられるスプレッド型地すべりの調査検討を行った.その結果,本地すべりは塑性変形を起こしやすい湖成層の上に塊状の安山岩質溶岩が載るという地質構造のところで発生していること,移動体の上面には移動方向に直交する線状凹地が多数認められること,線状凹地埋積堆積物の年代は少なくとも数千年前に遡ること,移動体末端には現河床礫を取り込んだ塑性変形した湖成層が分布すること,そこに含まれる植物遺体のAMS-14C年代は6650yrBPであることなどが明らかとなった.
3: やや遅れている
コロナ禍のため満足な野外調査ができなかったため.特に,氷河期に広く氷河に覆われたスイスアルプスの,氷河の荷重の徐荷後の山体重力変形地形の特徴の解明ができなかった.
2021年度で終了する予定の研究であったが,コロナ禍のため実施できなかったスイスアルプスにおける野外調査を2022年度に行いたい.また,熱帯地域における山体重力変形地形の調査も行い,熱帯,温帯,寒帯という気候・植生の違いによる山体重力変形地形の発達過程の違いを明らかにしたい.
コロナ禍のため,2021年度には予定していたスイスアルプスにおける野外調査を実施することができなかった.本調査は2022年度に実施予定である.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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巻: 63 ページ: 2-12
Proceedings of the 5th International Workshop on Rock Mechanics and Engineering Geology in Volcanic Fields (RMEGV2021)
巻: - ページ: -
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山の科学
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