研究課題/領域番号 |
19K03991
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大谷 具幸 岐阜大学, 工学部, 教授 (20356645)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 根尾谷断層 / 活断層掘削 / 密度回復 |
研究実績の概要 |
本研究は根尾谷断層を対象とし,調査地域は1891年濃尾地震の際に6 mの垂直変位を生じた岐阜県本巣市根尾水鳥である.本地域は圧縮性断層ジョグに位置しており,原子力規制庁が掘削したNDFP-1とNDFD-1-S1のボーリングコアを用いて,2021年度は粉末X線回折分析,蛍光X線分析,XGT分析を行った.粉末X線回折分析では,最新すべり面を含む断層ガウジのみで方解石とスメクタイトが検出された.蛍光X線分析では,NDFP-1の最新すべり面とその近傍でCaの濃度が高い値を示すことを確認した.XGTでは,最新すべり面の近傍でCaの濃度が高いのに対して,最新すべり面そのものでは相対的に低い値を示すことを確認した. これまでに行ったX線CT解析により,最新すべり面では密度が低く,他のガウジでは原岩と同程度の高密度であることが明らかになっている.よって,調査対象地は圧縮性断層ジョグであるにもかかわらず,濃尾地震の際に最新すべり面に沿って断層ガウジの体積膨張が生じ,密度が低くなったと考えられる.他のガウジでは,CT値が高く,密度が大きいことから,すべり面の密度回復が十分に生じており,その要因として断層ガウジ形成後の鉱物充填や,ある地震の際にすべり面とならないガウジにおける圧縮性ジョグの作用による圧密,広域応力場のもとで生じる地殻の短縮が挙げられる.上記の分析結果を加味すると,過去のすべりによって生じた断層ガウジ中の間隙は方解石とスメクタイトにより充填されたと考えられる.最新すべり面とその近傍で充填されている方解石は,濃尾地震の発生以降に充填が進んだ可能性に加えて,濃尾地震以前の断層運動でも同じすべり面が何度も動く中で充填が生じた可能性がある.なお,NDFP-1の最新すべり面は,最新すべり面でない断層ガウジと同様にスメクタイトを含むため,形成条件は類似していることが考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により,各種分析を予定どおり進めることができなかったために,遅れが生じた.そのため,研究実施期間を1年間延長することにより,当初予定した分析項目を完了できるようにした.
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今後の研究の推進方策 |
断層ガウジ試料を走査型電子顕微鏡で観察することにより,方解石やスメクタイトの産状を観察する.それにより,古い断層ガウジで間隙が充填されるプロセスを明らかにするとともに、最新すべり面ではそれが破壊されている様子を明らかにする。 走査型電子顕微鏡は学内施設であるフィールドエミッション走査型電子顕微鏡を用いることにより,高倍率による観察が可能である.また,この装置にはエネルギー分散型X線分析装置が付属していることから元素分析が可能であり,点分析と面分析を行う予定である.これにより,特に方解石の詳細な分布と産状を明らかにできると期待している.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響のため,各種分析が予定どおり進まなかったために,遅れが生じた.そのために,次年度使用額が生じた. そこで,研究期間を1年間延長して,2021年度に実施できなかった分析を2022年度に行うことにした.具体的には断層ガウジ試料の走査型電子顕微鏡観察を行うとともに,付属のエネルギー分散型元素分析装置を用いて,点分析と面分析を行う.これにより,断層ガウジ中に含まれる方解石とスメクタイトの産状が明らかとなり,両者による密度回復のプロセスを解明することができると期待している.
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