原子力規制庁が行った孔井掘削により得られたボーリングコアを用いて、1891年濃尾地震で活動した根尾谷断層の地下浅部における断層ガウジのX線CT観察、粉末X線回折(XRD)分析、蛍光X線(XRF)分析、微小部蛍光X線(XGT)分析、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)分析を行った。 対象としたボーリングコアは岐阜県本巣市根尾水鳥で掘削されたNDFD-1-S1(掘削長524.8 m、孔底深度516.9 m)とNDFP-1(140.0 m、106.8 m)の2本である。前者では断層ガウジ帯に分布する直線性と連続性がよい領域を最新すべり面と認定した。これは低CT値を示し、低密度となっていることが示唆される。後者ではコア観察では最新すべり面を特定することができないものの、低CT値を示す領域が含まれることからこれを最新すべり面であると認定した。 最新すべり面を含む断層ガウジ帯ではスメクタイト・方解石が検出されるとともに、Caが多く含まれる傾向にある。一方で、最新すべり面は隣接する断層ガウジと比べるとCaが相対的に少ない。SEM観察により、最新すべり面ではCaの濃集部が点在するのに対して、隣接する断層ガウジでは脈状の分布を示している。これは断層破砕帯の発達において古くはクラックを方解石が充填していたものの、最近の活動では破砕を生じるのみであること、また濃尾地震から約130年が経過した現在でも鉱物充填は進んでいないことを示している。
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