| 研究課題/領域番号 |
19K03994
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| 研究機関 | 鳥取大学 |
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研究代表者 |
石田 直人 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (20534746)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 表層型メタンハイドレート / 海底地すべり / ガスハイドレート安定領域 / 日本海 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では山陰沖の大規模な海底地すべりに対し，表層型メタンハイドレート分解の観点から発生機構を検討する．日本海の表層型メタンハイドレートは海底近傍に濃集して胚胎され，その安定性を左右する外的要因（海水準変動や堆積作用など）の影響を受けやすく，また，周辺層への影響が顕著に現れやすい．特に，分解に伴う胚胎層の変形や地盤支持力の低下が海底地すべりを引き起こす可能性は以前から指摘されている．
研究対象とした海底地すべりは鳥取県沖約80 kmの隠岐トラフ南西斜面に位置し，地形変状のすべり方向の長さは20 kmに達する．地すべり周辺にはマウンドやポックマーク等の表層型メタンハイドレート胚胎域に特徴的な海底微地形が多数認められ，両者の関連が強く示唆される．
海底地すべり変状域の末端で採取したコアには，ATテフラの下位に泥礫を含む地すべり堆積物が確認された．前年度までに，この海底地すべりは最終氷期最盛期に向けた海水準低下期に発生したことが判明していたが，今年度は14C年代測定を追加し，さらに微化石層序（珪藻・放散虫），テフラ，全有機炭素濃度等から多角的に検討し，発生年代の詳細を特定した．その結果，地すべりの発生年代は44 kaと判断された．
これによって，海底地すべり発生当時の海水準や，堆積作用によるメタンハイドレート安定領域の変動量が正確に評価できるようになった．試算の結果，地すべり発生当時，メタンハイドレート安定領域基底は地すべり土塊の直下に位置していたことが判明した．海水準低下による水圧減少に伴ってメタンハイドレート安定領域が上昇し，メタンハイドレート（固体）が水（液体）とメタンガス（気体）に分解して地盤支持力が低下し，安定領域基底をすべり面として斜面が滑動したという仮説を，試算の結果は強く支持している．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では研究段階を設定しており，（１）海底地すべり発生年代の特定，（２）発生時点のメタンハイドレート安定領域の復元，（３）発生前後の外的要因による安定領域の変動過程を解明し，最終的に（４）メタンハイドレート分解に伴う堆積物の物性変化によって海底地すべりが発生し得るかの検証，の順に進める．このうち研究初年度には（１）～（３）まで実施した．２年目は（１）についてさらに詳細な結果を得たため，（２），（３）について再検討した．最終年度に（４）を残す段階まで本研究は進んでおり，「おおむね順調に進展している」と判断した．
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| 今後の研究の推進方策 |
設定された研究段階のうち，（１）海底地すべり発生年代の特定，（２）発生時点のメタンハイドレート安定領域の復元，（３）発生前後の外的要因による安定領域の変動過程の解明，については研究初年度に試算を実施した．さらに，２年目に特定された海底地すべりの発生年代を基に，海水準変動量や堆積速度を正確に見積ることが可能になり，（２），（３）の再検討が進められている．研究最終年度は（２），（３）について結果を確定するとともに，（４）メタンハイドレート分解に伴う堆積物の物性変化によって海底地すべりが発生し得るかの検証，を進める．本研究は，海水準低下による水圧減少に伴ってメタンハイドレート安定領域が上昇し，メタンハイドレート（固体）が水（液体）とメタンガス（気体）に分解して地盤支持力が低下し，安定領域基底をすべり面として斜面が滑動した，という仮説に沿って進めているが，これが妥当かどうか，最終的な結論を得る．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
令和２年度中に外部機関で自らが実施予定であった分析作業が，COVID-19の感染拡大により実施の見込みが立たなくなった．よって，これを外注によって実施することを計画し，不足額を前倒し支払い請求によって次年度予算から調達した．しかしながら，当初予定していた機関から利用許可が得られ，予定通り分析作業を実施したため，調達した額との差が次年度使用額となった．COVID-19の状況次第であるが，最終年度にあたる令和３年度は旅費に不足が見込まれるため，次年度使用額は本課題の成果公表のための学会参加等に充当する方針とする．
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