研究実績の概要 |
2022年度は,2021年度に元素分析を行った出雲平野東部から得られた堆積物試料HK19コアの一区間において,古台風の変動を復元するため珪藻群集の高解像度(1cm間隔)分析を行い,元素変動との対比を行った.分析した年代は4600年前から4000年前である.この年代に決定した理由は,HK19コアにおいて縞状堆積物が堆積しているとみられる期間であることや,高解像度の元素分析を昨年度既に行っていること,そして2017年に既に韓国東岸の海跡湖においてこの年代の珪藻・元素組成を分析しており対比が容易なためである.結果として,珪藻の低塩分浮遊性種やZr/Rb比・Fe/Ti比の増加が示す出雲平野における豪雨の発生タイミングは,韓国東海岸の海跡湖に記録された豪雨の発生タイミングと多くの時期で一致することが判明した.その要因として大型台風が日本海を経由し北上する際に両地域で豪雨をもたらしやすいため,日本海を北上する台風の有無を反映していることが考えられる.同調した豪雨が頻発した時期は約4,450年前から4,300年前にかけてであり,この時期はエルニーニョの頻発した時期であり偏西風の北上が早かった時期にあたる.日本海を経由する大型台風の頻度がこの2つの要因に支配されていることが明らかとなった. 論文成果として,日向湖の洪水記録を含む古環境変動を国際誌に投稿し掲載された.また出雲平野東部の層序に関する報告を国内誌に投稿中で,珪藻群集に完新世の地形変動史に係る結果を執筆した(近日中に投稿予定).
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