本研究では,サンゴの白化現象に影響を与える礁微地形や台風等の気象・海象に伴う表面海水温や塩分などの礁微環境の変化やその時間・空間スケールを明らかにするために,サンゴ礁北限域に位置し,近年,白化現象が確認されている鹿児島県喜界島と,サンゴ礁核心域に位置し,同一島内において白化現象の発現に差異がある沖縄県宮古島を対象として,1)礁微地形,特に礁嶺の発達程度や浅礁湖の規模による浅礁湖内における礁微環境の相違の解明,2)気象・海象現象,特に台風の勢力・進路によるサンゴ礁内での外洋水循環の違いと礁微環境の変動とその時間・空間スケールの解明,ならびに,3)浅礁湖微環境の変動に伴う造礁サンゴの白化現象の有無と推移を目的とした.令和元年度に,喜界島において異なるサンゴ礁微地形を有する調査地点の選定ならびに観測機器の設置を実施し,観測を開始した.一方,宮古島については,令和元年度に機器設置地点の選定を行ったものの,令和2年3月以降の宮古島内におけるコロナ感染拡大により,島内外の移動制限・出張自粛により,機器設置が叶わなかった.そのため,喜界島での取得データを主体とし,他地域との比較は公開海洋データを基に実施した.喜界島では,令和元~3年度の連続海洋環境データを取得することができ.同期間に得られた海水温変化記録と気象庁の気象・海象データとの比較することにより解析を実施した.その結果,喜界島内での位置や礁微地形が異なる観測地点では,同一の気象条件においても海水温変化に相違があり,これらの多くは風向・風速,ならびに潮汐がが大きく関与していることが明らかになった.また風向の変更に伴い,日中であってもわずか3~4時間で表層海水温が4℃近く変化することが明らかになった.また礁核心域も北限域も表層海水温は,台風来襲頻度が海水温に大きな影響を与えていることが明らかになった.
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