研究課題/領域番号 |
19K03999
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三浦 大助 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50371414)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 降灰 / 火砕物密度流 / カルデラ / マグマ / シークエンス |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は,巨大噴火の火山噴出物にみられる噴火様式の推移(=噴火シークエンス)とマグマの物質科学的性質から,降下火山灰(降灰)/火砕物密度流の割合が変化する要因を明らかにすることである.本年度は,北海道のクッタラカルデラ火山噴出物のKt-1,Kt-3,Kt-Hyにおいて野外地質調査,粒度分析,構成物解析を行い,それら噴出物の特徴を明らかにすると共に,その堆積順序から噴火シークエンスを明らかにした.さらに,次年度以降に実施する恵山の溶岩ドームについても予察的な野外地質調査を行った. Kt-1・Kt-3噴出物は,北海道登別市郊外~白老町郊外における複数の大露頭で地質調査を行い,粒度分析・岩石化学分析用に約30試料を採取した.Kt-Hyに関しては,北海道登別市郊外を中心に,粒度分析用に18試料を採取した.これらの試料を用いて粒度分析を行い,噴出物の粒度組成と堆積様式の特徴を整理した.その結果,Kt-1とKt-3では,共に降灰と火砕物密度流を生じているものの,それらの堆積シークエンスが大きく異なること,また,Kt-Hyは,中間組成マグマの火砕物密度流が優勢であることが明らかとなった.Kt-1,Kt-3については,オレゴン州立大学においてEPMA化学分析を実施し,斑晶鉱物の化学組成の特徴から噴出したマグマの化学的特徴を調べた.その結果,Kt-1とKt-3では,珪長質マグマの化学組成が大きく異なることが明らかとなった.これらのことから,クッタラカルデラ火山では,噴火エピソードごとに噴火のシークエンスが異なること,また,マグマの化学組成も異なることが明らかとなった.したがって,マグマの違いを調べることで,噴火のシークエンスが変化する理由を明らかにできる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
巨大噴火の降灰/火砕物密度流の比を変化させる証拠を得るために,野外地質調査と岩石化学分析は,本研究の2つの大きな柱である.今年度実施した研究のうち,野外地質調査については良好な露頭を見いだし,記載・試料採取も順調に進んでいる.また,化学分析のうち,EPMAについては順調に測定が進み,Kt-1,Kt-3の化学的性質について有用なデータを得ることができた.一方,オレゴン州立大学のLA-ICP-MSが故障し,現地滞在期間の間に復旧しなかったことから,当該の測定分析を充分に実施できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き野外地質調査を実施し,クッタラ噴出物の噴火シークエンスを複数地点で精査すると共に,試料採取を行い,オレゴン州立大学において,岩石化学分析を実施する.特に今年度実施できなかったLA-ICP-MSによる分析項目を追加して測定を実施する予定である.これらの作業により,マグマの化学的特徴を整理し,巨大噴火の噴火プロセスとマグマの化学組成の比較・検討を行う.また,巨大噴火と溶岩ドーム噴火のもつマグマの性質を調べるため,恵山の地質調査を開始し,EPMA等を用いた化学分析を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
オレゴン州立大学のLA-ICP-MSが故障し,現地滞在期間の間に復旧しなかったことから,Kt-1,Kt-3の化学的性質について,当該分の測定分析を実施できなかった.次年度は,LA-ICP-MSの修理が終了している見込みなので,昨年度分も含めて分析を実施する.次年度使用額はその分析費用として充填する($700x4日分程度).それ以外の項目については,当初計画通りに実施する.
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備考 |
研究成果リストの更新は2017年度まで(2020年4月10日確認)
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