研究実績の概要 |
本研究の主な目的は,巨大噴火の火山噴出物にみられる噴火様式の推移(=噴火シークエンス)とマグマの物質科学的性質から,降下火山灰/火砕物密度流の割合が変化する原因,及び,準備過程の手がかりを明らかにすることである.最終年度である今年度は,北海道のクッタラカルデラ火山噴出物のKt-1,Kt-3,Kt-Hy及び恵山において野外地質調査,粒度分析,岩石化学分析を行い,それら噴出物の特徴を明らかにした. Kt-1, Kt-3噴出物は,北海道クッタラ火山山麓,並びに石狩低地帯に亘る複数の大露頭調査で得た試料について,粒度分析・岩石化学分析を実施した.オレゴン州立大学で予定していたEPMA化学分析並びにLA-ICP-MS分析は,コロナ禍で海外渡航が禁止のため本年度も実施できなかった.代わりに,大阪府立大学の共同利用設備のEPMAを用いて微小領域化学分析を実施し,斑晶鉱物の化学組成から噴出したマグマの化学的特徴を調べた.また,Kt-Hy噴出物については,その堆積相と全岩化学分析,EPMA分析による対比を行い,小規模な亜プリニー式噴火からマグマ水蒸気噴火が起こったこと,噴火活動期中に火口の移動が生じたこと,Kt-Hyの珪長質マグマがKt-3マグマと共通の組成をもつことから,珪長質マグマが巨大噴火に先行してKt-Hy噴火として顕現した可能性が示唆された.これらの成果をとりまとめ,学術論文として投稿し受理された.また,本研究の作業によって得られた知見を活用し,経費は用いていないが関連する研究論文を公表した. クッタラカルデラ火山では,噴火エピソードごとに堆積物のシークエンスが異なること,マグマの化学組成も異なることが明らかである.残るKt-1, Kt-3についても分析が進んだため,今後はマグマの性質と噴火シークエンスの因果関係を明らかにして論文を執筆する.
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