研究課題/領域番号 |
19K04001
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
古川 邦之 愛知大学, 経営学部, 教授 (20440620)
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研究分担者 |
宇野 康司 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (10510745)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 黒曜石 / 流紋岩 / 溶岩 / 姫島 / 神津島 / 皮子平 |
研究実績の概要 |
本研究では、黒曜石溶岩の流動と定置過程の理解を進めようとしている。2020年度はコロナ禍により、計画していた地質調査の多くが実行できず、また学会報告もできなかった。 3月には伊豆半島に分布する黒曜岩質溶岩である皮子平溶岩の調査を行った。この溶岩には溶岩じわが明確に確認できるため、地質のみならず地形学的にもその流動について研究することができる。この調査により、急斜面では溶岩内部においてキャビテーションが起きていることが確認された。キャビテーションは、雲仙普賢岳の溶岩ドーム (Smith et al., 2001)や、阿蘇火山の高野尾羽根溶岩 (Furukawa and Uno, 2015)など珪長質溶岩から報告されており、脱ガスシステムにも関係する可能性があるので、その理解は溶岩の挙動を解明する上で重要である。今後は帯磁率異方性を分析することで、流動時の応力を解明し、詳細な流動過程を明らかにする。 また、阿蘇火山に分布する黒曜岩質部の発達する高野尾羽根溶岩において、流動中の応力状態を決定するため、帯磁率異方性を測定した。それにより、溶岩全体が純粋剪断を受けていることがわかった。これは、Furukawa and Uno (2015)の結果と調和的である。この成果については地質学雑誌に投稿し受理され、現在印刷中である。 姫島の城山溶岩については、地質的検討、帯磁率異方性、そしてFTIRによる含水量測定の結果が出そろった。これらの結果をまとめ、定置過程のモデルを構築した。この成果に関する学術論文を作成、投稿し、現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナ禍により、計画通りの地質調査ができなかったが、2編の学術論文を作成、投稿できたことは大きな進展と考えている。神津島の沢尻湾溶岩の地質調査ができなかったものの、その代わり、皮子平溶岩の研究が予定以上に進んだ。これらのことから現時点において、本研究目標である黒曜石溶岩の流動、定置過程の精密なモデル構築に概ね順調に近づいていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、前年に実行できなかった沢尻湾溶岩の地質調査を行う。溶岩内に見られる塑性変形するfractureと、その周辺の酸化部は流動中の脱ガスに関係した構造だと考えられるので、その詳細な形成過程を解明する。コロナ禍により、沢尻湾溶岩の分布する神津島に行くことが困難な場合には、伊豆半島の皮子平溶岩の含水量分析や磁気分析、薄片観察を行う。当初は沢尻湾溶岩の調査後、皮子平溶岩に取りかかる予定であったが、その順番を変えても研究遂行上の問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が、647,431円あるが、コロナ禍により神津島の地質調査を実行できなかったこと、またアメリカで行われる地球物理学連合に参加できなかったことが大きな原因である。 今年度においても海外での学会報告ができない可能性が高いため、国内での地質調査と化学分析を重点的に行う予定である。
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