研究課題/領域番号 |
19K04003
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
島田 英之 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70268598)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 家屋 / 浸水 / 3D / CG / インターネット / Webブラウザ |
研究実績の概要 |
本研究では,浸水発生時に自宅周辺で実際に起こりうる状況を3次元CGで再現し,一般的なWebブラウザ上で確認できる仕組みを,インターネット上のサービスとして構築することを目的としている。 初年度の研究用サーバ設置導入や各種ソフトウェアのインストール,設定作業,岡山県倉敷市真備町一帯の合計17億点にも及ぶ膨大な3Dデータのレーザ測量と基礎的なデータ処理作業などの準備段階を経て,2020年度はデータの本格的な解析に着手した。多種多様なプログラム開発と各種実験による比較検討を行うことで,膨大な点群をその性質に従って間引いてデータ量を縮小し,点群を最適に接続して面を構成するための情報をあらかじめ計算して埋め込み,データ全体を分割して小領域ごとにラベルを付けて分割管理し,広大な領域から画面描画に必要な領域のデータのみを瞬時に検索してサーバからWebブラウザに順次非同期転送し,Webブラウザでデータを受信して内部で順次展開し,3Dシーンをリアルタイムに描画するまでの一連のプロトタイプを開発し,限られた環境下において実際に動作する段階にまで到達した。平易な操作で自由に3Dシーンを操作し,必要に応じて浸水の状況も表示できるようにした。また,人物を配置することで,浸水深を実感として把握できるようにするための基礎的な検討も行っている。 主な研究成果については,電気・情報関連学会中国支部連合大会および岡山リサーチパーク研究・展示発表会(岡山県委託事業)にて「サーフェスモデル構築のためのMMS点群の適応的間引き法」として口頭発表やビデオ発表を行い,情報発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年次の,予定外の管理。運営業務の繁忙による遅れを取り戻すべく,2年目は年度当初から本研究課題に注力した。17億点に及ぶ3Dデータの処理方法について,初年度に購入・設置した研究用サーバをフル活用してデータ圧縮や3Dシーン再構成など多くの実験を行い,現実的な処理方法を導き出すことができた。 本研究の3つの「問い」である,(1)時間空間がまちまちなMMS点群を統合し,頻繁な更新・追加・削除に対応するには,どうすればよいか,(2)大量のMMS点群をWebブラウザからの要求に応じて効率よく検索し,圧縮して伝送するには,どうすればよいか,(3)多様な利用環境下のWebブラウザにおいて常に適切な3次元CGを再構築するにはどうすればよいか,のうち,研究推進方策通りに(1)と(2)に重点を置き,それぞれに見通しを立てることができた。(3)についても,汎用の3Dライブラリの活用やWebフレームワークの導入など,多様な環境を意識した取り組みを進めている。以上のことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
多様な利用環境下のWebブラウザにおいて常に適切な3次元CGを再構築するにはどうすればよいかについて重点を置き,インターネット上のサービスとして実現するために,全体の最適化を進める。特に,Webブラウザで誰でも操作できるものとするには,平易かつ軽快なユーザインターフェースを要求される。ゆえに,各種Web関連技術の中からどんなものを選び,それらをどう組み合わせるかという試行錯誤と,現実的なシステム構築の手間が予想される。少なくとも真備町全域のデータで完結した範囲で,一連の機能を持ったサービスを提供できるところまで到達したいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年次の研究の遅れもあり,2年目のサーバ増強計画について具体的な方針を立てられなかった。そこで,2年目に膨大なデータを扱い始めたことを契機にまずはハードディスクのみを増強し,今後の研究の進行に従って必要な部分の性能向上を図ることにして次年度に繰り越した。その後の研究の進行により,メモリ増設の必要性を感じることが多くなったため,3年目は次年度使用額と翌年度分を利用し,主にサーバのメモリ増設を行いたい。高信頼かつ大容量のハードディスク,潤沢なメモリを持つサーバコンピュータにより,データ送出の高速化が図れるものと期待する。
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