研究期間を通じて,道路や周辺家屋を実測したデータを元に浸水時の状況を3D表示し,任意の場所に車や人の3Dモデルを配置し,浸水深に応じた危険度を平易に示して防災意識に訴えかけるインターネットサービスを開発できた。 研究に際し,平成30年7月豪雨時の真備町における浸水域をMMS(移動計測車両)で走行しつつ計測した,計100シーン分の高密度3D点群データが協力企業より提供された。研究期間の最初3年間は,このデータを元に3Dシーンを構成するための要素技術の開発を進めた。内容は,連続スキャンされたデータの分解,MMSの走行軌跡を基準としたトリミング,走行方向のデータ間引きによるスキャンライン密度の安定化,個々のスキャンライン内の形状や色の特徴を温存した点間引き,2本のスキャン間の高速ポリゴン生成,インターネット配信に適した形でのデータ分割と格納と,多岐に及ぶ。 そして最終年度は,全ての要素技術をまとめ上げるべく,Web配信に必要なサーバとWebブラウザ側のWebアプリケーションの開発に注力した。その結果,真備町の浸水域内の主要な道路とその周辺の3Dシーンを,実際にWebブラウザで閲覧できるようになった。Webブラウザは,ユーザの操作に応じて必要なデータを高速に絞り込んでサーバに要求する。サーバは要求に応じてデータを圧縮してWebブラウザに送信し,Webブラウザ側で展開して3D表示を行う。これらの処理の多くはユーザの操作に対して非同期に行われるので,キャッシュ機構と相まって,ユーザは,軽快にWebアプリケーションを操作できる。また,高速なグラフィック処理機能を持たないPC等でも動作する。 再現された浸水シーンは精度が高く,かつトンネルやアンダーパスなども含まれているため,浸水を想定した自動車の走行ルート計画,通学路の安全確認などの防災教育など,様々な活用を通じて防災意識を高めることに役立つ。
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