研究課題
地球中心には、中心に鉄からなる液体外核と固体内核にからなる核が存在する。核は主に鉄からなるが、密度や地震波速度を説明するために、軽元素が含まれると考えられている。本研究では液体である外核の物理的性質を明らかにするために、高温下での鉄系液体の密度測定を行なうために、X線吸収法による高圧下密度測定の手法開発を進める。本年度は、試料室加工用のレーザー加工機の立ち上げに取り組んだ。レーザーを加工試験用金属に照射し穴が空いたことを確認した。実験は結晶鉄の密度測定をXRDとX線吸収法を用いて、24 GPaまでの圧力まで密度測定を行なった。使用したX線のエネルギーは30 keVであった。密度測定試料は結晶性の粉末鉄で、厚み参照試料としてはKBrとRbBrを利用した。また、圧力決定のために試験的に鉄を詰めた試料室にNaClも同時に詰めてNaClの状態方程式から圧力を見積もった。XRDとX線吸収法から求めた密度は最大で3%の差で一致した。また、有限要素法を利用し、ダイヤモンドの変形を検討し、測定に影響しないという結論を得た。上記の結果は、国際誌へ投稿中である。また、Zr系金属ガラスの測定も試みた。ガラスは直径4mm程度のバルク資料であり、100 μm程度まで両面研磨を行ない、KBrとRbBr用に二つ試料室用の穴をあけて高圧実験を行なった。2、4、6 GPaにて測定を行なった。室温下での密度は先行研究と比較して0.3%の差で一致した。6 GPaまでの測定から体積弾性率は46 GPa程度と分かった。試料室変形が顕著となり以後の加圧はやめた。今後は、試料室変形対策を講じて実験を進めてきたい。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、DAC中にある非晶質物質の密度をX線吸収法によって測定することを目的としており、現在までに結晶性鉄の密度を24 GPaまでX線吸収法によって測定した結果、X線回折法によって求めた密度と比較して3%以内の一致を示した。密度測定に必要な厚みは、アルカリハライドを用いて求めたが、NaClやKClは吸収係数が小さいため測定のばらつきの影響を大きく受けることが分かった。そのため、KBrやRbBrを厚み参照用試料として用いた。また、有限要素法を用いてダイヤモンドアンビルの先端の変形具合を見積もった。ダイヤモンドアンビル先端径が0.6 mmで、圧力が20 GPa発生した状況下で中心から0.15 mmまでは高低差が0.001 mm程度でほぼ平らであり、実験範囲内でのダイヤモンドの変形は無視できることがわかった。Zr系の金属ガラスを厚み0.121 mmまで両面研磨した板をガスケット材として用いて、KBr、RbBr用の試料室を作成し、DACを用いて加圧した。加圧前、2、4、6 GPaの計4圧力条件で測定を行なった。その結果、加圧前の常圧下での密度は、8.901(0.120) g/cm3と求められ、先行研究と誤差の範囲内で一致した。高圧下での密度は圧力とともに上昇したが、試料室の変形があったためその影響が密度にどの程度出ているのかが不明であるため今後変形が起こりにくい試料配置にして実験を進める。また今回の測定で誤差が大きかったのは、X線強度測定時における強度のばらつきによるため、今後はその点を改善して測定に臨む。以上のように,非晶質物質である金属ガラスの高圧下での密度測定に成功した。また、24 GPaまでの圧力範囲において結晶鉄の密度測定に成功し、ダイヤモンドの変形による影響も検討でき、影響は小さいことを明らかにした。以上のことから、おおむね順調に進行していると判断した。
これまでに、室温下において常圧から24 GPaまでにおいて鉄の密度測定に成功し、6 GPaまでにおいて金属ガラスの密度測定に成功した。金属ガラスをガスケット材としても用いたため、変形をあらかじめ起こす型押しをしなかった。加圧によって高密度が予想されたためである。しかし型押しをしなかったため変形が大きく、厚み測定用のKBr、RbBr用試料室の変形が大きく、測定圧力が6 GPaまでと限られてしまった。今後は、ガスケット材は別に用意し、金属ガラスは試料室に収まるサイズに加工したものを使うことで変形の影響を避ける。そして圧力40 GPa程度まで密度測定とX線回折パターン取得を進め、圧力誘起の結晶化の有無、構造と密度の関連を引き続き解明していく。また、外熱DACを用いたPd系金属ガラスの透過率測定を行ない、高圧高温下での密度変化を調べる。結晶化が起こる温度まで測定を行ない、ガラス転移、結晶化を検出可能か検証する。さらにFe系金属ガラスの密度測定も火星核条件を満たす圧力条件である40 GPaまで行なう。同時にX線回折パターンを取得し、構造変化の有無も明らかにする。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件)
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