地球中心には、鉄からなる核が存在し、液体外核と固体内核に分けられる。核の密度や地震波速度を説明するために、主成分の鉄に加えて軽元素が含まれる。液体である外核の物理的性質を明らかにするために高温下での鉄系液体の密度測定が必要不可欠である。そのために、X線吸収法による高圧下密度測定の手法開発を進める。 前年度に立ち上げた試料室加工用のレーザー加工機を用いて金属ガスケットに穴を開け、セラミックスの切り出しテストを行なった。X線吸収実験によって求めた結晶鉄の密度は、XRDから求めた密度と比較して、25 GPaまでの圧力まで最大3%の差で一致した。本研究は論文としてまとめ投稿し、査読コメントに対応中である。これまで厚み参照試料としてはKBrとRbBrを利用した。ただ、鉄と試料室が異なるため、実験圧力の誤差が大きくなったため、試験的に鉄の試料室に試料室の1/3程度の大きさのNaClペレットも詰めた。NaClとFeが重なった状態での透過率を求め、KBrとRbBrの透過率から求めた試料室厚みを再現するNaClとFeの厚みとFeの密度をそれぞれ求めた。NaClの状態方程式から求めた圧力とFeの圧力はおおよそ一致した。 また、Zr系金属ガラスの測定は、KBrとRbBrを参照試料として用い、6 GPaまで測定を行なった。常圧室温下での密度は先行研究と比較して0.3%の差で一致した。6 GPaまでの測定から体積弾性率は46 GPa程度と分かった。弾性波速度測定も行ない、体積弾性率は114(2) GPa、剛性率は33.4(2) GPaと求められた。これらは先行研究とよい一致を示した。圧縮実験から求めたK0は弾性速度測定から求めた値と比較して小さいが、これは圧縮過程において弾性変形よりも塑性変形が卓越していることを示唆している。
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