研究課題/領域番号 |
19K04008
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
福山 繭子 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (40630687)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レーザーアブレーション / 誘導結合プラズマ質量分析 / 微小領域分析 / 炭酸塩鉱物 / 方解石 / 放射性同位体 / U-Pb / 年代測定 |
研究実績の概要 |
岩石の形成年代は、地殻の進化とその動的過程を解明する為に欠かすことができない情報である。炭酸塩鉱物である方解石は、石灰岩の主要な構成鉱物であるだけでなく、幅広い岩石中に普遍的に産出し、岩石の割れ目を充填する脈として、また断層の形成に伴って断層岩中にも産出する。このような脈や岩石にはジルコンのような年代測定が可能な珪酸塩鉱物が存在することは稀であり、方解石の形成年代を知ることは、その割れ目や断層の形成時期への制約を与えることとなる。近年、方解石の年代測定が、局所分析が可能なレーザーアブレーションシステムと誘導結合プラズマ質量分析計を用いたウラン(U)-鉛(Pb)年代測定法により試みられている。ただ、方解石は、これまでにU-Pb年代測定法が確立されているジルコンと比べると、十分に標準試料が準備されておらず、組織観察や元素濃度から形成環境を推定できる適切な指標がなく、これらの構築が急がれる現状にある。そこで、本研究では、方解石U-Pb年代法に用いる標準試料を整備し、方解石の組織情報と元素情報を組み合わせた方解石の形成環境指標を世界に先駆けて構築することを目的としている。 令和元年度は、本研究の目的である方解石U-Pb年代測定法に用いる標準試料(PKC-1)を整備した。U-Pb年代測定法の分析手法を含め、国内外の学会で発表を行った。国内外の本標準試料を希望する大学・研究機関5ヶ所に配布を行った。令和2年度は、本研究のもう一つの目的である「方解石の組織情報と元素情報を組み合わせた方解石の形成環境指標の確立」を行うため、異なる産状の方解石を用い、その形成条件と化学的特徴を検討した。この研究成果は、国内外の学会で発表を行ない、国際誌への投稿準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの方解石標準試料候補から、適切な試料を選定し、年代測定を実施し、方解石標準試料を作成したことは、本課題の大きな成果といえる。本研究のもう一つの目的である、「方解石の組織情報と元素情報を組み合わせた方解石の形成環境指標」は標準試料となる岩石の鉱物学的特徴および地球化学的特徴を明らかにする過程で一つの指標を見出した。これを検証するために、標準試料と異なる形成環境の方解石試料の検討を行った。この結果、年代測定が可能な方解石試料の特徴が明らかになりつつある。これらを総合すると、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、方解石だけではなく、炭酸塩鉱物のU-Pb年代測定として、U-Pb年代測定の適用範囲を広げるため、方解石以外の炭酸塩鉱物についても検討を行う。また、令和3年度は最終年度でもあるため、研究を推進すると共に、これまで得られた研究成果をまとめ、国際誌に論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に購入を予定していた物品(ヘリウムガス等)の一部を令和3年度に購入することとした。また購入を予定していたカナダからの標準物質は年度内の納品が間に合わず、令和3年度に購入することとした。これらのことから次年度使用額が生じた。
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