研究課題/領域番号 |
19K04009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
亀 伸樹 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90304724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 境界積分方程式法 / 地震サイクルシミュレーション / 不均質構造 / 断層 / XBIEM |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、拡張積分方程式法(XBIEM)を用いて、地震サイクルシミュレーションを不均質媒質中へ拡張することにある。この現実的な不均質構造中での自発的な核形成、動的破壊伝播開始と進展、地震後の強度回復、その後の地殻応力載荷という地震発生サイクルシミュレーション全体の計算で必要になる2次元亀裂問題における「静的」な弾性すべり応答関数の解析表現の導出をモードI, モードII, モードIIIのすべての破壊モードの亀裂問題に対して行った。この解析関数を用いて、最も単純なモードIIIの変形モードに対して、2層境界媒質中の静的亀裂の変形場を計算するプログラムを作成し、解析解のある二つの例と比較することにより、計算が正しく行われているかの検証をおこなった。一つ目の例は、無限均質媒質中の変形場である。2層媒質プログラムにおいて2層の弾性定数を等しく置くことにより、均質媒質を表現し、層境界での変形場の接続が正しくなされているかを確かめた。二つ目の例は、互いに半無限の2層境界媒質中の亀裂の静的変形場である。無限の長さの媒質境界を、有限長の境界要素で近似し、有限長の境界の端点が十分に遠い場合には、変形場が正しく求められることを確認した。次に、沈み込み帯の2次元モデル構築に対応するモードIIの変形問題に対してプログラムを作成し、計算が正しく行われているかを検証した。モードIIIの研究成果については2020年日本地震学会秋季大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震発生サイクルシミュレーション全体の計算で必要になる2次元亀裂問題における「静的」な弾性すべり応答関数の解析表現の導出を終え、これを標準的な均質媒質中の地震サイクルシミュレーションコードに組み込み、不均質媒質に拡張する際に必要となる数学的基礎を固めることができた。これにより 来年度の研究の方針についての見通しを得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在のプログラムで解析することのできる現実的な応用例として、海底地殻変動観測データからプレート境界のカップリングレートを見積もる際に、既往研究で仮定されてきた均質媒質から、現実的な硬いプレートと柔らかい付加体の不均質構造を用いた場合に、値が変わるかどうか、という興味深い問題がある。技術的に簡単に解答できるこの課題に取り組み、不均質構造の影響評価の第一歩とする。次に、地震サイクルシミュレーションを行い、不均質構造の地震発生における影響評価に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年12月に研究成果発表の国外出張を予定していたが、新型コロナウイルスの影響が続くなか現地開催が中止となり、これによりオンライン開催となり参加を取りやめたため、次年度使用額が生じた。問題が収まった後に、成果発表のための国外出張を行う。
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