研究実績の概要 |
沈み込み帯浅部で発生する普通地震と浅部低周波微動(Tremor)の分類基準を明確にするために、DONET1観測網の広帯域地震計記録を、系統的に精査した。まず、一年間のDONET1データから、エンベロープ相関法により一定の基準で普通地震とTremorをそれぞれ約1000個ずつ検出した。次に、特に小さなサイズ(マグニチュード)をもつ普通地震及びTremorに着目し、それらを定性的に比較した結果、Tremor波形は(1)高周波数成分(>10Hz)の枯渇、(2)不明瞭なシグナルの立ち上がり、により最もよく特徴付けられることが分かった。従来の研究ではそれら以外に (3)長いシグナル継続時間を呈することがTremor波形の特徴とされてきた。しかし、観測点が震源の直上にあるような近地の記録では、Tremorはしばしば短いシグナル継続時間(~1秒)を呈する。また、Toh et al., (2018)において指摘される通り、それらのTremor波形は震源から僅か10kmほどの隣接する観測点では、継続時間10秒以上の間延びしたシグナルに変化する。これらの観察結果は、Tremorが必ずしも長い震源時間を持つ訳ではないことを示唆するとともに、Tremor震源域に高周波成分を枯渇させ、シグナルの立ち上がりを不明瞭にするような異常構造があることを示唆するものである。これらの研究成果は、2020年日本地球惑星連合で発表予定である。
参考文献: Toh, A., K. Obana, and E. Araki (2018), Distribution of very low frequency earthquakes in the Nankai accretionary prism influenced by a subducting-ridge, Earth and Planetary Science Letters, 482, 342-356
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