研究課題/領域番号 |
19K04011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金子 隆之 東京大学, 地震研究所, 准教授 (90221887)
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研究分担者 |
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70222354)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 火山 / ひまわり8号 / 噴出率 / 噴出的噴火 / 西之島 |
研究実績の概要 |
本年度は,低粘性溶岩の噴出的噴火において,ひまわり8号のリアルタイム観測で得られる熱異常から噴出率を迅速に推定する方法を開発した.噴出的噴火において,1.6um 赤外画像の熱異常は,噴出率変化をよく反映していることが指摘されている.このことは,両者の間の相関を吟味し,回帰式を求めることにより,衛星による熱異常観測から噴出率を推定できることを意味する.低粘性溶岩の噴出的噴火である2017年西之島噴火を対象に,ひまわり8号の1.6um画像での熱異常と噴出率の関係を検討し,両者の間に高い相関関係があること(r^2=0.99)を確認した.また,この回帰式が,Y=0.47X(Y :噴出率 10^6 m3 day-1 ,X :輝度値 10^6 W m-2 sr-1 m-1)と求められることを示した.さらに,2017年西之島噴火と同様の低粘性溶岩の噴出的噴火である2015年ラウン噴火の溶岩を同図にプロットすると,2017年西之島溶岩による回帰直線の延長上に載ることが分かった. この方法を用いて,2019年12月に始まった西之島4期噴火最初期の噴出率の推定を行った.12月5日-6日における輝度値の最高は,1.07 x 10^6 W m-2 Sr-1 m-1であり,先の回帰式により噴出率は 0.50 x 10^6 m3/dayと推定される.この値の妥当性を調べるために,ALOS-2画像を利用した地形的方法により,2019年12月5日12時00分頃から6日11時18分(JST)までの23.3時間(0.97日)の噴出率を推定した.この間の溶岩の噴出体積は455,000 m3 と見積もられ,流下時間が23.3時間であることから,0.48 x10^6 m3/dayの噴出率が得られた.この値は,ひまわりの熱異常による噴出率の推定値(0.50 x 10^6 m3/day )とほぼ一致している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度にGCOM-C「しきさい」SGLI画像を用いて,代表的な噴火事例の解析を行い,多様な側面をもつ火山活動の観測にきわめて有効であることを確認することができた.2021年度は,ひまわり8号の熱異常値から,噴出率の推定を行う方法を開発した.これにより,低粘性溶岩の噴出的噴火について,ひまわり8号のリアルタイム観測から噴出率の即時推定が可能となった.以後現在まで,GCOM-C「しきさい」SGLI画像とひまわり8号画像を用いたアジア太平洋域のリアルタイム火山観測システムを継続して運用し,主要167活火山の観測を続けている. 本リアルタイム火山観測システムにより,2019-2020年の西之島の噴火活動(4期)が観測された.西之島の従来の活動(1~3期)は,低粘性溶岩の噴出的活動に終始するものであったが,この4期は,低粘性溶岩の噴出的活動から溶岩噴泉を伴う爆発的活動に急速に移行するという特異な活動であった.また,2021年には,福徳岡ノ場等でも予想外の特異な噴火が発生したが,これらについても本システムにより観測を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
西之島4期の活動等は,きわめて稀な活動であり,このような活動の発生メカニズムを明らかにすることは,学術的に重要と考えられる.このため,研究期間を1年程度延長し,詳しい解析を行うことが必要と判断された.これまでの研究で利用しているひまわり8号による熱異常のデータに,新に衛星による火山ガス放出状況,高分解能画像による地形変化,噴出物の岩石学的データ等の解析結果を併せて検討することにより,活動の解明が進むことが見込まれる.今後,このような観点から検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
西之島4期の活動等は,きわめて稀な活動であり,このような活動の発生メカニズムを明らかにすることは,学術的に重要と考えられる.このため,研究期間を1年程度延長し,詳しい解析を行うことが必要と判断された.このような研究において,詳しい地形解析を行うために,商用衛星の高分解能画像が必要となった.また,噴出量を正確に見積もるために,衛星データベースのディジタル標高データが必要となった.次年度の研究費は,主にこれらの購入費に充てる.
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