本年度は,ひまわり8号としきさいのデータを用いて2018年新燃岳噴火と2019年ベズィミアニ噴火の比較検討を行った. 2018年新燃岳噴火では,溶岩噴出ステージの終了後,ブルカノ式噴火のステージが発生した.この推移を反映して熱異常変化は,連続的な高い熱異常からスパイク的な熱異常の発生期へと変化することがわかった.一方,比較のために行った2019年ベズィミアニ噴火は,溶岩噴出の途中で爆発的噴火が発生する噴火推移をとることがわかった.爆発的噴火が溶岩噴出の途中か後に発生するかで,2つの噴火推移タイプがあることが確認された.両者の違いは,溶岩噴出の過程において,火道浅部マグマからガス成分が効率的に放出されるか否かが,関係していると推定される.さらに,新燃では,個々のブルカノ式噴火は,前駆する熱異常を伴わないため,熱異常変化は急騰漸減の非対称型のパターンとなり,ベズィミアニでは,前駆する溶岩噴出のため漸増漸減の対称型の熱異常変化パターンとなるといった違いが認められることがわかった. 本研究初年度の2019年度は,ひまわり,ALOS-2,ランドサット画像を用いて,西之島2017年噴火の活動推移の解析を行った.2020年度は, GCOM-C(しきさい)衛星の画像により,インドネシア,イジェン火山の火口湖の水温モニタリング,2017年キラウエア火山噴火に伴う大規模溶岩流の噴出過程の解析,カムチャッカ,シベルチ火山2019年噴火に伴う溶岩ドームの成長と崩壊型火砕流の関係の検討を行った.2021年度は,ひまわりの1.6-umバンドの熱異常と低粘性溶岩の噴出率が高い正の相関関係を持つことを見出し,ひまわりによる熱異常の観測からリアルタイムで噴出率を推定する方法を開発した.2022年度は,各種衛星画像による西之島4期(2019-2020年)活動の複合的解析を行い,噴火推移の詳細を明らかにした.
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