本研究では反磁性体を用いた磁気浮上を応用し、新しい地球観測用機器を開発することを目標とする。最大の特色は、機械式振り子による制約を解消するために、磁気浮上振り子を用いる事である。また、低コストで実用的な装置とするために、反磁性体と永久磁石の組み合わせによる磁気浮上を採用する。このような方式による傾斜計を、モデルと実験の両面から研究する。さらに将来的な展望として重力計への応用を視野に入れ、電磁力学モデルを構築して浮上体の特性を調査する。 傾斜計試作に関しては、前年度までに磁気浮上系の特性を計算するための半解析モデルを構築して、静的な条件下で実測との一致を確認した後、モデルに基づいて磁気浮上系を設計、製作した。今年度はそれにに加えて別に製作した簡易式変位センサー、傾斜を制御するためのアクチュエータ等を組み合わせて傾斜計試作機を製作した。簡易なアナログ回路による制御を試みた結果、一応の制御には成功したが、高周波での発振が抑制できず、長時間の安定制御の妨げとなった。これは、制御対象である浮上系の動的力学モデルが不完全であることや、外乱(空気の流れなど)に原因があるものと推察される。これについては本研究期間終了後も引き続き継続課題として取り組む予定である。 重力計の研究としては、前年度までに構築した超伝導重力計における磁気浮上体の非線形効果の影響を見積もるための有限要素モデルを用いて、超伝導重力計での水平-鉛直カップリングを見見積もり、実機での測定値とよく一致することを明らかにした。
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