研究課題/領域番号 |
19K04013
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
常盤 哲也 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (50649241)
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研究分担者 |
森 宏 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (80788183)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 西南日本 / 地質構造発達史 / 広域地質構造 / ジルコンU-Pb年代 / ラマン分光分析 |
研究実績の概要 |
本研究は,白亜紀~ジュラ紀の付加体およびその変成岩からなる四万十帯・秩父帯・三波川帯が唯一直接接している紀伊半島を中心として,広域地質調査や変形構造解析に加え,最新の手法(ジルコンU-Pb年代やラマン分光分析など)を用いることにより,広域地質構造・年代・被熱温度・変形から,地質構造発達史を明らかにし,未だ論争のあるジュラ紀~白亜紀における西南日本の形成史(地質構造発達史)を解明するものである. 2022年度は,広域的な地質構造発達史の解明を進めるため,紀伊半島における現地調査を行うと共に,比較対象として赤石山地での試料採取や年代測定を進めた.その結果,堆積年代や最大被熱温度のデータが取得され,複数のスラストシートから構成されるなどの詳細な地質・地質構造が明らかとなった.また,数十地点における変形構造解析の結果,左ずれ剪断が卓越していることを見出した.この左ずれ剪断が認められる地質体は,ジルコン年代測定から白亜紀の中頃であると考えられる.つまり,白亜紀の中頃における西南日本には海洋プレートが左斜めに沈み込んでいた可能性が極めて高いと考えられる.また,赤石山地のジルコンU-Pb年代構成のデータは,白亜紀の後期に火成活動が活発化したことを示した.この白亜紀の後期の火成活動の活発化は,紀伊半島でも認められることから,白亜紀後期の日本列島は大規模な火成活動が生じており,その影響が海溝充填堆積物に明確に反映されることが明らかとなった.現在,この結果について論文化を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,紀伊半島にて地質調査,ジルコンU-Pb年代,被熱温度測定用の試料採取を行い,各地質体の堆積年代の推定や最大被熱温度のデータの蓄積に加え,変形構造解析についても研究を進め,当該地域の形成過程に関するデータの蓄積を行うと共に,比較対象として赤石山地での試料採取や年代測定を行うことを予定していた. 2022年度末までの研究代表者らの調査・解析による年代や最大被熱温度から,詳細な地質・地質構造が明らかになると共に,変形構造解析から白亜紀の中頃の地質体は左ずれ剪断が生じていたことを見出した.この成果は,白亜紀の中頃に左斜め沈み込みが生じていたことを示すものであり,よりデータの蓄積が必要であるが,大きな成果の一つであると考える.また,比較対象として行った赤石山地のジルコンU-Pb年代構成は,白亜紀の後期に火成活動の活発化を示した.この白亜紀後期の火成活動の活発化は紀伊半島でも認められることから,白亜紀後期の西南日本においては,大規模な火成活動が生じていたことが示唆される.これらの成果については,あと少しのデータを加えるだけで論文執筆を行える段階に来ており,本研究の遂行状態は良好であると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,昨年度と同様に,紀伊半島にて地質調査,ジルコンU-Pb年代,被熱温度測定用の試料採取を行い,各地質体の堆積年代の推定や最大被熱温度の測定を行う.また,変形構造解析についても研究を進め,広域地質構造の構築を行う.加えて,広域的な地質構造発達史の解明のため,紀伊半島との比較対象として,九州地方や赤石山地での試料採取や各種分析を行い,随時論文執筆を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
ヘリウムガスの供給不足から,予定していた他機関での分析の一部を次年度に延期したため,次年度使用額が生じた.次年度使用額については,令和5年度請求額と合わせて分析を行うための旅費等として使用する予定である.
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