本研究は,白亜紀~ジュラ紀の付加体およびその変成岩からなる四万十帯・秩父帯・三波川帯が唯一直接接している紀伊半島を中心として,広域地質調査や変形構造解析に加え,最新の手法(ジルコンU-Pb年代やラマン分光分析など)を用いることにより,広域地質構造・年代・被熱温度・変形から,地質構造発達史を明らかにし,未だ論争のあるジュラ紀~白亜紀における西南日本の形成史(地質構造発達史)を解明するものである. 2023年度は,地質構造発達史の解明を進めるため,紀伊半島や赤石山地などで採取した試料の年代測定を進めた.その結果,ジルコンU-Pb年代構成がより明らかとなり,紀伊半島と赤石山地では白亜紀の後期に白亜紀ジルコンを多く含むようになる点で共通していることがより明確となった.よって,白亜紀後期の火成活動は非常に大規模であったと考えられる.しかし,紀伊半島では9千万年前~7千万年前のジルコンが多く含まれるのに対して,赤石山地では1億1千万年前~1億年前のジルコンが多く含まれ,ジルコンのU-Pb年代構成は東西で異なることが明らかとなった.紀伊半島の9千万年前~7千万年前のジルコンは領家花崗岩類に多く認められ,赤石山地の1億1千万年前~1億年前のジルコンは阿武隈花崗岩類に多く認められる.このジルコンの供給状況は,大きな左横ずれが生じたとする説を必要としておらず,西南日本の地質構造発達史の解釈に大きな情報を提供するものと考えられる.現在,上記の成果について国際誌に投稿中である.
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