研究課題/領域番号 |
19K04022
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
田中 佐千子 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波火山ネットワークセンター, 主任研究員 (30551535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歪みエネルギー / 余震活動 |
研究実績の概要 |
地震が発生すると,地下に蓄積された歪みエネルギーのバランスが変化する.この変化によって,規模の大きい地震(本震)の後には,続いて多数の地震(余震)が発生することが知られている.余震活動の分布を説明する際,これまではクーロンの破壊基準が広く用いられてきたが,本研究では,歪みエネルギーそのものの変化の観点から,余震活動の評価を試みる.対象とする本震は,大規模地震に限らず,中規模程度の地震まで拡大する.日本全域を網羅するよう,様々な規模の本震に対する余震活動を統一的に取り扱うことにより,両者の対応関係の普遍性や多様性を明らかにすることを目指す. 本年度は,日本列島下の内陸地震(1997年10月~2017年12月,深さ30 km以浅,マグニチュード5.5~7.3,26個)について,余震系列の抽出を行い,余震域の空間的な広がりを調査した.広い本震規模範囲にわたる余震系列の抽出は,地震カタログに対してクラスター処理(時空間的に近接した地震群を抜きだす処理)を施すことにより,行った.近年の高精度地震データを用いて抽出した余震系列から余震域を定義し,本震規模とのスケーリング関係を改めて検討した.また,様々な断層幾何の断層運動によって生じる歪みエネルギー変化を評価し,その統計的な特徴と余震域の広がりに対するスケーリング関係を比較することにより,余震域の広がりは,本震による平均的な剪断応力の変化が0.01MPa程度以上の領域に対応することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,余震系列の抽出を行うクラスター処理のパラメータ選定を行い,本震-余震系列のデータベースの作成を進めた.また,断層運動による歪みエネルギー変化の計算を行い,余震域の広がりとの対応関係から,歪みエネルギー変化に基づく余震活動評価の妥当性を確認することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本震規模をより小さいものまで拡大し,歪みエネルギー変化と余震活動の対応関係を網羅的に調査する.歪みエネルギー変化と余震活動の対応関係は単純ではなく,地域性や本震の断層特性との関連性等,複雑な振る舞いを示すことが予想される.地域ごとに関係を評価し,その特徴やばらつきの抽出を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外出張を取りやめたため,次年度使用額が生じたが,次年度において,研究打ち合わせ・情報収集のための物品購入に使用する予定である.
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