研究課題/領域番号 |
19K04024
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
下司 信夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (70356955)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マグマ / 噴火 / 火道 / 過剰圧 / 爆発性 |
研究実績の概要 |
三宅島の火口壁に露出する火道供給岩脈について、爆発強度が異なる4つの歴史噴火(7世紀すおう穴噴火、9世紀雄山噴火、16世紀噴火および1983年噴火)の割れ目火口を調査対象として抽出し、その割れ目アスペクト比を推測し、それに基づきマグマの過剰圧と発泡度を推測した. 野外調査に基づき、噴火割れ目周囲に分布する噴出物の産状から噴火の爆発強度を評価し、強い溶岩噴泉噴火(すおう穴)、弱いストロンボリ式噴火(16世紀及び1983年噴火)、溶岩流出噴火(9世紀噴火)に区分した.また山頂陥没火口に露出する火道である供給岩脈の厚さを写真計測により算出し、航空写真・高分解能DEM・野外調査を組み合わせて割れ目火口の水平延長を計測し、これらから割れ目のアスペクト比を計算した. また母岩の物性としてヤング率を地震波速度から推測し、それぞれの噴火割れ目の形状から噴火割れ目を満たすマグマの過剰圧を推定した.推定されたマグマの過剰圧をマグマの浮力によるものと仮定し、その浮力がマグマの発泡度によって支配されると仮定することにより、供給岩脈を満たすマグマの平均的な発泡度を推測する関係式を作成した. 作製した関係式を三宅島の各割れ目噴火の供給火道に適用した結果、供給岩脈の形状から推測されるマグマの過剰圧と噴火の爆発性にはよい相関があることが判明した.また、供給岩脈を満たすマグマの発泡度は一般には低く、溢流的な溶岩噴出で特徴づけられる供給岩脈の発泡度は数%程度、激しい溶岩噴泉を引き起こしたすおう穴割れ目火口でも10~20%であると推測された.この結果は、供給岩脈の上昇中にマグマに含まれる気泡が効率よく離脱していることを示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
三宅島の供給岩脈のマグマ過剰圧について、野外調査と岩石学的特徴及び母岩物性の推測方法を交えて推測することに成功し、また実際の噴火様式とも相関関係のある結果を得られた.また供給岩脈内の発泡度についても合わせて推測し、実際に観察される発泡度ともほぼ整合的な結果が得られた.これらを取りまとめた論文の執筆と投稿を本年度内に実施することができた.
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今後の研究の推進方策 |
三宅島における供給岩脈の過剰圧とそれから推測する発泡度の論文について本年度中に公表するとともに、地盤変動観測からとらえられたいくつかの岩脈貫入事件や岩脈による割れ目噴火の事例を収集し、三宅島におけるモデルと比較することにより、非噴火イベントも含めたマグマ過剰圧のバリエーションやマグマ発泡度の推測を行う.また三宅島で見られるよりも広い噴火強度のバリエーションの噴火を対象とするため、国内外の爆発的割れ目噴火の火道の形状についても情報収集を行うとともに野外調査を実施し、三宅島で得られたモデルの妥当性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
既存のデータの解析および最初の論文作成に予定よりもエフォートを割いたため、実際の三宅島における野外調査の実施が計画よりも短縮された.また予定していた海外機関との共同研究のための渡航を中止したため、次年度使用額が発生した.次年度において野外調査の実施および延期された国際学会への参加費用として使用する.
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