変成岩をはじめとする天然岩石の圧力解析は、熱力学を応用した手法に依存している。しかし、岩石は複雑な系であるため、熱力学解析を適用できない場合も多々ある。本研究では顕微ラマン分光分析を軸に、高圧型変成岩の形成圧力条件を推定できる「新たなラマン地質圧力計」の開発を目指した。解析試料は主に三波川帯権現地域の石英エクロジャイトであり、基質の藍晶石に包有された石英を対象に、ラマンスペクトルの網羅的検証を行った。その結果をもとに、残留圧力の数値計算モデルを精査し、藍晶石―石英系における新たなラマン地質圧力計の構築に成功した。一連の成果は、Tomioka et al. (2022)として査読付き国際誌The Canadian Mineralogistに公表済みである。なお本研究期間では、2020年度の研究代表者の異動およびCOVID-19を理由とした出張制限などにより、研究計画の大きな変更を余儀なくされた。しかし、当初設定した研究課題は概ね達成されたと判断される。
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