本研究では、東南海地域の南海トラフのプレート境界断層および巨大分岐断層の物質科学的特徴を明らかにし、動力学破壊伝播シミュレーションによる地震時の破壊伝播過程の時空間変化について調べた。摩擦係数が001-0.06のとき、海溝底付近で約30 mの滑りが発生、一方で摩擦係数が0.21の場合、震源からの滑りは抑制され、海溝底付近での滑りはほぼ0であった。但し、断層の間隙水圧が地震前にほぼ静岩圧に等しい場合、摩擦係数が0.21であっても、海溝底付近では約25 mの滑りが生じうることが明らかになった。よって、海溝底付近の滑り量は、断層の摩擦係数のみならず初期の間隙水圧の状態に大きく依存すると言える。
|