研究実績の概要 |
本研究では、地球中心コアの化学組成を明らかにするために液体Fe軽元素合金の音速を、実際のコアの圧力領域で測定し、コア軽元素を解明することを目的としている。今年度は、昨年度に引き続き、液体Fe-Sの非弾性X線散乱測定を行い、30―100GPaでの音速を決定した。レーザー加熱式ダイアモンドアンビル高圧高温発生装置を用いて、高圧高温下でFe合金試料を融解させ、非弾性X線散乱法を用いて音速測定を行った。音速測定結果より、状態方程式を構築し地球コア圧力温度下での液体Fe-Sの音速と密度を決定し、液体外核コアの地震波観測データと比較した。その結果、外核が6.1wt%-7.3wt%の硫黄を含んでいるとすると、外核コアの音速と密度を十分に説明可能であることが明らかになった。これまでに我々が行ってきた、他のFe-軽元素(C, N, Si, P)合金の結果と比較すると、外核コアの音速と密度を同時に説明しうるのはSだけである。さらに、この硫黄量は、コア-マントル境界温度においてコアが液体状態を維持するために必要な硫黄量も十分に満たす。しかし、このような硫黄を多量に含むコア組成は、コア形成モデルから支持されているケイ素を多量に含む従来のモデル相反する。このことは、コア組成が形成時から現在に至るまでの間に変化していることを示唆する。最近のFe-Si-O系の高圧融解実験および理論計算から、地球史に渡るコア冷却過程で、SiO2成分が液体コアから析出分離した可能性が示唆されている。本研究結果と合わせて考えると、ケイ素や酸素とともに硫黄を多く含んでいた液体コアは、SiO2成分を析出しながら化学進化し、現在では硫黄のみを軽元素として多量に含んでいる可能性が示された。
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