研究実績の概要 |
断層の内部構造や断層沿いの透水性が,初期亀裂の分布(密度・サイズ)や応力条件にどの様に影響するかを評価することは,特定の岩盤中に断層が発達する際に,深さや応力状況によって,断層の内部構造や透水性がどうなるかを評価する上で重要である.2019年度は,インドのRajasthan産の砂岩(間隙率11%;石英68 %, カリ長石18 %, 斜長石10 %, 雲母1 %, その他3 %)を対象に,900℃で加熱し,室温で十分に冷却することで内部亀裂を増加させた試料(間隙率14 %)と,未加熱の試料の2種類について,封圧下で軸方向に一定の速度で変形させながら,応力・歪,および軸方向の流体移動特性を測定した.計画では,始めから花崗岩を用いるとしていたが,巨視的破壊前後の透水性の変化を調べるためには,破壊前でも,透水性が測定可能範囲になるということから,まずは砂岩を採用した.次年度以降,花崗岩の実験も検討する.実験の結果,巨視的破壊前の透水性の変化,およびその応力・歪との関係は,どちらの試料でも定性的には同様の挙動を示した.一方で,破壊前後での巨視的な透水性の変化は異なる結果となった.これは,破壊構造の違い(岩石試料の両端をつなぐ様な巨視的な断層が形成されたか,片方の端面付近で変形が集中したか)に強く依存していると思われる.また,破壊強度は,未加熱試料よりも,加熱試料の方が大きくなる傾向が見られた.これは,当初の予想と反するものである.その原因として,加熱による鉱物の変質や,二次的鉱物の生成・膠着物質の析出が考えられる.今後,岩石試料の微細構造の観察や分析によって,内部亀裂の分布とともに,加熱前後の構成鉱物の変化なども調べる必要がある.
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