研究実績の概要 |
断層の内部構造や断層沿いの透水性が,初期亀裂の分布(密度・サイズ)や応力条件にどの様に影響するかを評価することは,特定の岩盤中に断層が発達する際に,深さや応力状況によって,断層の内部構造や透水性がどうなるかを評価する上で重要である.実験試料にはインドのRajasthan産の砂岩(間隙率11.5%;石英68 %, カリ長石18 %, 斜長石10 %, 雲母1 %, その他3 %)を用いた.内部亀裂分布の異なる試料を作成するために,岩石試料を加熱・冷却した.加熱温度は,前年度の結果を踏まえ650℃とした.また,冷却の過程として,過熱後加熱炉の電源を切ってから炉内でそのまま冷却した場合(650deg_slow;間隙率11.7%)と,過熱直後に試料を冷水で強制的に冷却した場合(650deg_rapid;間隙率13.3%)の2通りで実験試料を準備した.この2つと,未加熱処理の試料(intact)の3種類の試料について実験を行った.封圧10MPaでの軸圧縮破壊実験の結果,最大差応力の値および巨視的破壊後の残留差応力の値に大きな違いはなかった.一方で,最大差応力に達してから,巨視的な破壊が起きるまでの差応力の変化ならびに体積ひずみの変化には違いが見られた(差応力の低下量:intact < 650deg_slow < 650deg_rapid;体積ひずみの増加量:650deg_slow < 650deg_rapid).変形後の試料を観察したところ,断層ガウジ帯の幅の大小関係はintact < 650deg_slow < 650deg_rapidとなった.今回の結果は,巨視的な破壊に至るまでの局所的な亀裂生成,破壊のプロセスが,初期亀裂の状態に関係する可能性を示唆する.亀裂密度分布に関しては,偏光顕微鏡または走査型電子顕微鏡による観察をもとにした手法について検討し,評価する予定である.
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