研究課題
1.南アフリカ、バーバートン地域のTTGマグマから生成した片麻状花崗岩類(Badplaas pluton , Inyoni shear zone、Batavia pluton)の岩石記載およびEPMAやLA-ICP-MSなどを利用した各種精密機器測定を行った。その結果、以下のことがわかった。(1)造岩鉱物として石英や斜長石が多く、Qtz-Pl-Afdの三角ダイアグラム上でトーナライトに区分される(2)分離したジルコンのU-Pb年代値はそれぞれ3244 ± 15 Ma, 3180 ± 6.6 Ma, 3251 ± 5.4 Maであり、従来報告されている各プルトンのジルコンU-Pb年代値と矛盾しない(3)ジルコンのεHf (t)の値は 2.0から-2.1であった(4)U-Nb-Yb図では、分離したジルコンはmantle-arrayの少し上、かつArc-type、OI-typeの領域にまたがる(5)ジルコンのチタン温度計が示す各プロトンのジルコン結晶化温度は700-850℃である。これらの結果は、TTGマグマはソレアイト玄武岩地殻の加水を伴う部分溶融により生成したことを示唆する。2.白亜紀試料としてモンゴル産恐竜歯化石を例にアパタイトU-Pb年代測定を行った。その結果、化石中のアパタイトの多くは、化石化後の変質によるウランの撹乱により推定される年代値に比べ優位に若い値を示すことがわかった。3.顕生代と太古代の珪長質マグマの冷却速度の比較のため、関東山地北縁の川井山石英閃緑岩体のジルコンの年代測定と微量元素測定を行った。その結果、岩体形成に関与したマグマ活動は277.1 ± 3.2 Maであったことがわかった。また、これまで報告されている同岩体の角閃石K-Ar年代値との比較から当該岩体のマグマの冷却速度は約9.2 °C/ Ma以下であったことが示唆された。
4: 遅れている
2021年度は、新型コロナウィルス感染症対策のため、研究に費やす時間を制約せざるをえない状況であった。そのため、私も研究に従事していた学生も、測定を思うように進めることができなかった。したがって、研究活動が順調に進んだとは言い難い。次年度は計画的に精密機器分析を実施していくことで少しでも遅れをカバーしていきたい考える。以上のことから(4)とした。
1.南アフリカ、バーバートン地域の花崗岩類のマグマ形成過程およびその冷却史を明らかにするため、Badplaas pluton、Inyoni shear zone、Batavia plutonの片麻状花崗岩からアパタイトを分離し、その年代測定および微量元素組成分析を行う。2.アパタイトのU-Pb年代測定や微量元素の特性を知るため、地質年代がある程度推測可能な岩石/化石中のアパタイトを使って、LA-ICP-MS年代および微量元素測定を行う。3.年代測定に欠かせないツールとなったジルコンの変成作用に対するカソードルミネッセンス(CL)特性変化を知るため、太古代ジルコンや白亜紀ジルコンに対し、カラーCL やスペクトル解析を行う。4. 本研究によってこれまで得られた研究結果を統合し、バーバートン花崗岩―緑色岩帯の形成史モデルを構築する。また、他地域の太古代地質体の形成史と比較することで、太古代地球で起きていた造山運動を議論する。
新型コロナ感染症のため、海外学会への参加・発表が困難になった。繰り越し分は、研究遂行に必要な機器分析に関わる消耗品に使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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