研究課題/領域番号 |
19K04048
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
松井 洋平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭技術開発プログラム), 特任技術副主任 (90756199)
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研究分担者 |
藤崎 渉 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80815192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 硫化物 / 硫酸塩 / 二酸化硫黄 |
研究実績の概要 |
元素分析計の燃焼炉で硫黄を含む化合物を燃焼させた際に生成する硫黄酸化物の除去のために、銀とバナジン酸銀からなる触媒の作成を試みました。その結果、焼成温度・焼成時間に依存せず、目的化合物は生成しないことがわかりました。そこで、焼成炉の雰囲気を酸化的雰囲気(実験室大気)および、不活性雰囲気(アルゴン置換)における実験を試み、焼成温度についても50℃~200℃まで段階的な加熱を行いましたが、やはり生成化合物は非晶質でした。そこで、バナジン酸銀・酸化銀・酸化銅・酸化コバルトの組み合わせた高温炉を作成しました。炉の温度は600℃が適していることがわかりましたが、600℃では、試薬にもともと含まれる二酸化炭素のブランクが高いことから、ガスクロマトグラフのオーブンのベーキングを行い、二酸化炭素ブランクの低減を試みました。オーブン温度240℃、30分のベーキングによりブランクが低減されることがわかりましたが、その後、カラム温度を通常の分析温度に戻したのちに、数分経つと次第に二酸化炭素のBGが上がってくることが分かりました。そこで、一時的に炉の温度を700℃とすることで、炉の中心部のみならず、左右端に残存するブランクの低減をこころみ、700℃約30分の焼成により、ブランクを低いまま保持できることがわかりました。その後、硫化鉄、硫化亜鉛、および硫酸カルシウムの分析を行い、300mg相当の硫黄除去が可能であることがわかりました。また、本研究の遂行中に硫黄分による銀カプセルの腐食が明らかになりましたので、炭酸塩を含む試料の元素分析を行う際の脱炭酸手法の成果を発表しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた、高温炉を作製し元素分析計に組み込み硫黄除去実験を行いました。硫化鉄・硫化亜鉛・硫化モリブテン・硫酸カルシウム・海底堆積物について分析を行い、おおむね良好な結果を得ています。また、開発中の手法を進展させ、実試料に適用するため、炭酸塩と硫化物を同程度含む堆積物試料についても分析を行いました。しかし、硫黄除去効率については若干改善の余地があり、引き続き実験を行い手法を完成させます。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、硫黄除去手法を完成させ、実試料、特に生体硬組織・海底堆積物・陸域堆積物・化成品など種々の含硫化合物への本手法の適用性を確認し、成果を公表する予定です。手法の完成のためには、系内での種々触媒の分布最適化と、系内圧力とキャリアガスの流速について種々の組み合わせによる試験を行い、最適な範囲を選定することとします。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、事業所の業務縮小が要請されました。そのため、2020年4月~7月にかけて、当初予定していた使用計画と使用額に相違が生じました。具体的には、消耗品・試薬類が購入できず、また分析のための実験施設への訪問なども原則禁止となったことにより、旅費に相違が生じました。次年度使用額については、分析可能試料について、より幅広く探求するとともに、触媒表面の電子顕微鏡観察と元素分析のための消耗品に使用します。
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