研究課題
本研究には次にあげる4つの目的がある。(1)“むかわ竜”は新しい恐竜(親属新種)なのか?(2)“むかわ竜”は,ハドロサウルス亜科なのかランベオサウルス亜科なのか?そして他の恐竜との関係は?(3)“むかわ竜”はいつどこからやってきたのか?(4)“むかわ竜”は白亜紀終わりのユーラシア大陸においてハドロサウルス科の多様化を支持するのか,衰退を支持するのか?」これまで、標本のクリーニング作業と骨化石の修復は9割程度終え、それぞれの骨の同定を完了している。記載においても、それぞれの骨の記載や図作成も終えた。比較研究と系統解析も行い、“むかわ竜”の系統的位置の把握に成功している。その上で、それらの成果を論文として出版し、この恐竜を親属新種の恐竜と判明した。この恐竜を「カムイサウルス・ジャポニクス」と命名した。系統解析の結果によると、カムイサウルスは、ハドロサウルス科の中のハドロサウルス亜科であることがわかり、さらにその亜科の中のエドモントサウルス族に属すと結論づけた。また本研究により、ハドロサウルス科は北米の海岸線の環境で多様化したことが示された。さらに、エドモントサウルス族は、白亜紀後期にはアジア大陸と北米大陸に分布しており、その後、アジアに取り残されたクレード(カムイサウルス、ライヤンゴサウルス、ケルベロサウルス)が独自に進化したことがわかった。このように海岸線の環境が、ハドロサウルス科の初期進化にとって重要であったことを示唆したのは初めてのことである。
2: おおむね順調に進展している
この研究で大きな課題だったのが、標本のクリーニングだったが、この作業は予定通り行われ、9割程度の骨化石の同定が終了した。しかし、残りの1割には重要な化石部位があると考えらえるが、同定には至っていない。記載は、順調に行われ、エドモントサウルス族に属すことまではわかったが、本族の恐竜化石の観察にまでは至っていない。特に、北米アラスカ州から発見されているエドモントサウルス属の化石や足跡化石の研究を進める必要がある。今後、この作業を続けていく予定である。
系統解析の結果、ベーリング海峡(当時は陸続きだったので陸橋)を介してカムイサウルスの仲間(エドモントサウルス族)は、アジア大陸と北米大陸を行き来していたことが明らかになった。今後は、そのベーリング陸橋に当たるアラスカ州の恐竜化石(骨化石と足跡化石)と、アジア大陸の恐竜化石(特にモンゴルと中国)の化石との比較研究を進め、カムイサウルスの仲間やそれを取り巻いていた他の恐竜たちの移動や進化を追求していく。
当初想定していたよりもモンゴル出張旅費の費用がかからなかったため若干の残額が生じたが、次年度のモンゴル出張旅費の使用に充てる予定である。
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