研究課題/領域番号 |
19K04055
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
後藤 晶子 金沢大学, 地球社会基盤学系, 博士研究員 (00422791)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 直鎖飽和アルキル脂質 / 安定同位体比測定 / シダ植物 / 裸子植物 |
研究実績の概要 |
古環境や古気候の復元・植生解析・後背地の推定などの議論に陸上高等植物バイオマーカーとして使用される長鎖の直鎖飽和アルキル脂質の含有量や安定同位体比などの情報を得るため、シダ・裸子植物葉の採取作業を冬季~春季にかけて所属大学敷地内でおこない、種類を同定したうえで粉末化を進めた。現在採取した試料は、シダ植物(5科8属)・裸子植物(4科6属)であるが、シダ植物は種類によって葉の生育する季節が異なることから、より多くの種類を収集するために夏季にも試料採取をおこなう必要がある。 各試料は凍結真空乾燥後に粉砕をおこなったが、裸子植物の一部は乾燥しにくく長期間の真空乾燥が必要で、乾燥が不十分だと変色を生じてしまうことが分かったため、十分に真空乾燥した後に粉砕して、その後にも再度の真空乾燥をおこなう手順を定めた。差異の有無を確認するために変色した試料についても粉末化して保管をしている。シダ植物は、種類によっては得られる葉量が少ないことが難点である。また、その形状が原因と思われるが、粉砕の際、粉末状まで細かくすることができない試料が多かった。 有機化合物の抽出に必要な試料量について文献調査を進めているが、特にシダ植物についてはその情報が少ない。長鎖の直鎖飽和アルキル脂質の安定同位体比分析に必要な量を見積もるために、今後、余剰のある試料を用いて予備実験を進め、その結果を基に各試料について有機化合物の抽出・分離作業と分析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シダ植物・裸子植物葉での長鎖の直鎖飽和アルキル脂質の含有量や安定同位体比などの情報を得るために、採取の時期・場所・状況を把握し、それぞれ属レベルまで同定ができた試料(シダ植物:5科8属・裸子植物:4科6属)を粉末化した。必要量の確認など前処理に関する予備実験をおこなったのち、各試料からの有機化合物の抽出・分離作業、分析に入る段階にあり、研究はおおよそ順調に進んでいるが、実験室が閉鎖されているため、粉末試料からの有機化合物の抽出には着手できていない。 裸子植物試料を所属大学敷地内で採取するための樹木の選定と、採取許可を得るのに時間を要したが、同一樹木から定期的に試料を入手できるめどが得られ、冬季からサンプリングを開始している。
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今後の研究の推進方策 |
安定同位体比分析のために必要な試料の処理量を見積もることを目的に、今後はすでに粉末化した試料の余剰を使用して、特に、前処理に関する予備実験をおこなっていく。その結果をもとに、各試料からの有機化合物の抽出、長鎖の直鎖飽和アルキル脂質の分離、含有量や安定同位体比の分析を進めていく。分析で得られる結果から、シダ植物と裸子植物について、長鎖 n-アルカンと長鎖 n-脂肪酸の含有量、それらの安定同位体比の特徴を検討していく予定である。シダ植物・裸子植物のそれぞれにおいて、複数の科、属が収集できていることから、シダ・裸子植物間での相違に加えて、科、属レベルでの特徴の比較も進めてく。今後、必要な試料を随時追加し、同様の分析を進めることで、季節変化や年変化、地域差の検討ができるデータも得ていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
裸子植物試料を採取するための樹木の選定と採取許可の取得にやや時間がかかったため、冬季~春季の試料の収集とそれらの凍結真空乾燥、粉末化を優先した。また、実験室の閉鎖にともない前処理(有機化合物の抽出・分離)のための予備実験に着手できておらず、それらに使用する予定だった試薬類、分析をおこなう際に必要になる消耗品類の購入が遅れている。 今後、収集した試料の一部を使用して予備実験をおこなった後に本実験を進める計画であり、生じている次年度使用額と当初予定している使用額で、収集・粉末化済みの試料からの長鎖 n-アルカンと長鎖 n-脂肪酸の抽出・分離、その量や安定同位体比の分析、追加試料の収集・分析、得られる成果についての公表をおこなっていく予定である。
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