研究課題/領域番号 |
19K04058
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高島 千鶴 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (10568348)
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研究分担者 |
狩野 彰宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60231263)
奥村 知世 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (90750000)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シリカ / 縞状組織 / 季節変化 |
研究実績の概要 |
今年度は堆積速度見積り実験をおこなっているタイル堆積物に焦点を当て研究を行った. 周辺の堆積物と同様に,タイル堆積物の断面にはミリオーダーの白色層と有色層の縞状組織が認められ,タイル設置による人工的な影響はないと考えられる. 堆積開始日から147日後に採集したタイル堆積物の厚さは約1.5mmであり,堆積開始日から466日後に採集したタイル堆積物の厚さは3~11㎜であった.堆積物の断面には,下位から(タイルの直上)から有色層,白色層,有色層,白色層の順に堆積しており,ミリオーダーの縞状組織が確認できる.白色層は孔隙質で,堆積面に対して垂直に伸びているフィラメント状のシリカが見られ,拡大すると孔隙に幅2ミクロン程の微生物が確認できる.有色層は緻密でフィラメント状のものが見られなかったが,有色層内にさらにミクロンオーダーの縞状組織が認められる.電子顕微鏡観察では有色層に微生物を確認できたが,白色層よりも少なく,微生物組織が堆積面に水平になっていることがわかった. 堆積物は,タイルの上に堆積が開始した2020年7月から2回目の採集を行った2021年10月の約1年3か月の間に,有色層,白色層,有色層,白色層の順に堆積している.このことから,ミリオーダーの縞周期は季節変化を反映していると考えられる.堆積開始時とタイル回収時期を考えると夏に有色層が堆積し,冬(夏以外)に白色層が堆積していると推測される.また,季節と微生物代謝との関連性を考慮すると,日光の量が縞周期に関与していると考えられる.,海外の温泉成シリカ堆積物の縞状組織に光合成細菌であるシアノバクテリアの関与が報告されている.本研究では光合成細菌の直接的な証拠を得られなかったが,堆積物中に見られた微生物は光合成細菌の可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症流行のため現地調査や分析等が滞り,本年度予定していた研究目標まで到達しなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は今年度できなかった遺伝子解析による微生物群衆の特定を行う予定である.温泉水中と堆積物中の微生物群衆を明らかにし,微生物代謝と鉱物沈澱,縞状組織の成因及び周期との関連性について議論し,研究をまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた調査回数が減少したこと,それに伴い分析も少なかったため次年度使用額が生じた.来年度の遺伝子解析や水分析の消耗品等に有効利用する予定である.
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