研究課題
研究成果の一部を国際誌(3編)と国内誌(1編)に投稿した.オルドビス末期の大量絶滅層準をはさむ可能性がある北部ベトナムバックカン省東部のセクションやオルドビス紀後期の化石群集について報告した論文は,Paleontological Rsearchに掲載され,北部ベトナムと西南日本の下部三畳系スミシアン・スパシアン境界で生じた絶滅イベント層については,Journal of Asian Earth Sciencesに掲載された.なお,他の2編についてもすでに査読誌に受理済で,これら2編の論文では下部デボン系とされていた地層からシルル紀後期の花粉化石群集が産出したことを報告しており,ベトナム古生界の層序と東南アジアにおける原始的な陸生維管束食物の群集構成や分布および分類学に貢献する予察的な内容である.また,ベトナム地質科学鉱物資源研究所(VIGMR)で開催されるシンポジウムで上記の研究成果について講演する予定で要旨や短報3編を投稿済であったが,この会議はコロナ禍の影響で延期となった.シルル・デボン系での研究については,後期シルル紀の花粉化石群集が産出した層準からオストラコーダや二枚貝,巻貝化石が多産し,非海成と浅海成層が繰り返している事が明らかになった.また,比較的保存状態の良い陸生維管束食物と原始的な魚類化石を採取・同定することもできたが,これらについては,追加試料・標本の採取が必要不可欠である.デボン紀後期フラニアン・ファメニアン境界における大量絶滅のイベント層についての研究は,ハーザン省ドンバン地域のSeo Hoセクションでコノドント生層序を確立する事ができ,上部ケルワッサー事変層は特定できたものの,下部ケルワッサー事変層については,試料の採取間隔の問題で十分に検討する事ができなかったため,追加試料の採取して安定炭素同位体比などの分析を行う必要がある.
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍の影響でベトナムでの地質調査が実施できず,参加を予定していたハノイでの国際会議も延期となったため,研究に大きな影響が生じたが,過去の調査で採取したデータと岩石・化石試料や最低限の追加試料をベトナム側の研究協力者に採取してもらい,無事に研究を進める事ができた.その結果,予定していた研究成果の7割ほどを学術論文(3編)に公表する事ができ,国際会議の要旨など(3編)もすでに提出済である.また,研究の過程で今後の研究の発展につながる予想外の重要なデータを得る事もできたため,研究全体としては概ね順調に進んでいると言える.
ベトナムでの地質調査の実施が最重要課題である.今年度はコロナ禍の影響で現地での調査および滞在許可を得る事ができなかったことやベトナムへの入国に伴う手続きが複雑な上にベトナム側の研究機関で作成する書類も多く,調査を実施する事ができなかった.しかしベトナム側の入国手続きが整備され,ベトナム地質科学鉱物資源研究所や研究協力者との調整も進んだため,天候の安定する秋(2021年9~10月)に北部べトナムでの地質調査を実施できる目処がたった.この調査でシルル紀の原始的な陸生植物化石を報告する上での地質学・堆積学分野のデータを採取することや,デボン紀後期の大量絶滅層準を特定する上で欠かせない分析に伴う岩石試料を採取することが可能になるだろう.
コロナウイルスの影響で予算の執行に影響が生じたため.残額については令和3年度で使用する予定.
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件)
Paleontological Research
巻: 25 ページ: 41-62
10.2517/2020PR011
Journal of Asian Earth Sciences
巻: 205 ページ: 104570
10.1016/j.jseaes.2020.104570 R
Annales De Paleontologie
巻: accepted ページ: 00
堆積学研究
巻: 79 ページ: 2