研究課題/領域番号 |
19K04060
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
林 昭次 岡山理科大学, 生物地球学部, 講師 (60708139)
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研究分担者 |
久保 麦野 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (10582760)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 哺乳類 / 島嶼化 / シカ類 / 齢査定 / 成長様式 |
研究実績の概要 |
島嶼地域に生息する様々な現生・絶滅シカ類の成長様式や人口学的特性を解明するため、日本各地ならびにモンゴルの博物館施設(動物園・水族館を含む)からシカ類の標本を借用し、CT撮影ならびに骨組織サンプル採取を行った。まだすべての研究対象となっている標本の分析は終えていないが、現在分析したサンプルから、予察的にではあるが、シカ類の島嶼化について以下の新たな発見があった: <1.四肢骨を用いた齢査定手法の確立> これまでの偶蹄類の齢査定方法は歯の歯根に保存されているセメント年輪および歯牙の萌出・交換状態から年齢査定する方法が一般的であるが、絶滅種は研究に利用できる標本が四肢骨しかないことが多い。そのため、四肢骨中に形成される成長停止線(以下LAGと呼ぶ)の数が、実年齢もしくは歯から推定された年齢と一致するか、現生ニホンジカを用いて解析した。その結果、ほとんどの個体において四肢骨内部に保存されているLAGの数は実年齢と一致し、シカ類の齢査定は四肢骨からも可能であることが明らかにできた。 <2.隔離期間に伴う成長様式の変化の可能性> 四肢骨内に保存されているLAGはその時点での骨の外径に一致しているため、LAGにおける骨の径を計測すれば、径と体重の関係式からLAG形成時点での体重を推定できる。先行研究において現生偶蹄類で求められている骨の径-体重の回帰式から、薄片を作製した各標本について、LAGでの体重を推定した。そのデータを基に年齢と推定体重から成長曲線を作成し、生息地の異なる現生シカ類の成長様式を復元・比較を行った。その結果、本州・北海道の個体群と比べて、島の面積が小さく大陸や本州・北海道との隔離期間が長い個体群のほうが成長速度や繁殖時期が遅くなっていることが予察的に明らかになってきた。従って、生息地の大きさ・隔離期間がシカ類の生理機能の変化をもたらす可能性があることが本研究によって示唆できそうである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織サンプルも順調に集まっており、当初の予定通りおおむね順調に進行している。ただ、CT撮影と薄片製作の日程調整がうまくできなかったため、本年度中にCT撮影・薄片製作を終了させる計画だった一部のサンプルがまだ終わっていないものある。
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今後の研究の推進方策 |
組織サンプル数(特に化石種)がまだ十分に足りないため、さらに標本数を増やす必要がある。また、現在集まった標本のいくつかは、組織観察のための薄片製作・CT撮影を行えていないものがあるので、順時進めていく。化石種の同定や化石・現生種を含めた成長様式の比較解析を行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響によって、2~3月に行う予定の調査・分析ができなかったため。
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