研究課題/領域番号 |
19K04063
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
御前 明洋 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (70508960)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 付着生物 / 穿孔生物 / 軟体動物 / 古生態 / 中生代 / 白亜紀 / アンモノイド |
研究実績の概要 |
本研究は、付着・穿孔生物をもとに、その基盤となった中生代軟体動物の古生態を解明することを目的としている。 2019年度は、白亜系水窪層・蝦夷層群・姫浦層群・外和泉層群・物部川層群・宮古層群の化石について野外調査を行い、また、これらの地層の標本に加えて和泉層群の化石の博物館標本観察を行った。その結果、多くの付着・穿孔生物化石を確認することができた。それらには、グループとして最古記録となるものなど重要な標本も含まれる。蝦夷層群・外和泉層群・姫浦層群より豊富に産出する穿孔生物に関しては、穿孔と宿主の応答の詳細な関係を観察する上で最適な位置で切断した研磨標本を作製することに成功した。この標本および、関連する他の多くの標本の観察により、宿主の古生態について有意義な情報が得られた。 研究成果として、付着生物に関係する論文1編が2019年度に受理・印刷された。内容は、高知県の外和泉層群宮ノ原層からセノマニアン階のアンモノイドを報告するものであるが、アンモノイドの住房内面にコケムシ類の付着が見られることを述べた。この論文により、付着生物化石の産出例と、そこから抽出できる埋没過程に関する情報について示すことができた。また、付着生物を伴う新種のアンモノイドを報告する論文が新たに受理された。これは、今後、付着生物と宿主となったアンモノイドの古生態を検討する上での基礎となる。さらに、和泉層群・外和泉層群のノストセラス科アンモノイドの産状と付着生物の関係について学会発表を行った。この発表では、付着基盤となった軟体動物の埋没過程を探る上で付着生物から有益な情報が抽出できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
蝦夷層群・外和泉層群・姫浦層群より豊富に産出する穿孔生物に関する試料の作製・観察・解析が予想以上に進展した。また、付着生物を伴う新種のアンモノイドを報告する論文が1編受理された。さらに、野外調査により、当初想定していなかった穿孔生物に関する極めて重要な標本を含め、多くの付着・穿孔生物の化石を採集することができた。以上の状況を踏まえ、このような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き各地での野外調査を進め、付着・穿孔生物を伴う軟体動物化石の採集を行う。また、採集標本のクリーニングや観察・解析を進める。試料の作製・観察・解析が進んだ蝦夷層群・外和泉層群・姫浦層群より豊富に産出する穿孔生物化石に関する研究内容については、学会発表の準備や論文執筆を行う。新たに発見した、グループ最古記録となる穿孔生物に関しては、その分類群を専門とする共同研究者と同定作業を進める。
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