研究課題/領域番号 |
19K04065
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
吉田 裕 北見工業大学, 工学部, 准教授 (30626122)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射光 / 白色X線 / 単結晶 / SEM-EBSD |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度取得した各回折斑点のプロファイルフィッティングによるデータの解析を継続するとともに電子顕微鏡の遠隔利用による検証に重点を置くこととした。電子顕微鏡を用いた検証は北海道大学の遠隔利用事業による走査型電子顕微鏡(SEM)-電子線後方散乱回折(EBSD)の支援を受けて行った。また、治具とともに曲げ試験機を遠隔利用できるように改良を行った。さらに大型放射光施設(SPring-8)での実験ができなくなったことから、一部計画を変更して、一括してデータ処理を行うプログラム開発を開始した。ラインプロファイルによる検討では、エネルギー分布図より各回折斑点(11-20)、(-2110)、(1-100)、(2-1-10)及び(-12-10)のプロファイルフィッティングを実施し、各回折面の積分強度、半価幅及び格子ひずみの算出を行った。積分強度や半価幅についてはフィッティング精度の点から課題が明らかとなり、データの扱いには、今後も議論が必要と判断し、追加検討を行っていくこととした。格子ひずむの算出では曲げ後のサンプル内部における各回折面のひずみ分布が明らかとなった。また、SEM-EBSDを用いた曲げ試験後の結晶方位解析によって、曲げ後の曲げ試験片表面に現れる結晶組織が明らかとなった。特に曲げ時の圧縮側で発達する双晶組織は明確に示されており、これまでの放射光データや他の文献とも一致した結果であった。ただし、SEM-EBSDを用いた検証方法の課題点も見つかったため、今後は検証方法の確立も含め検討していく予定である。効率化を目指したプログラム開発については、データファイルを集約し、エネルギー分布図を自動作成する段階まで開発が進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に実施予定あった放射光を利用した計測を中止したことから検討は遅れているが、SEM-EBSD解析を用いた検証により、曲げ試験後のマグネシウム単結晶表面全域の組織変化を把握するとともに結晶の回転に関する議論を深めることができた。また、CdTeピクセル検出器によって取得された電圧データを自動集約し、エネルギー値に変換させ、2次元のエネルギー分布図までを自動作成するプログラム開発は完成している。
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今後の研究の推進方策 |
中止した放射光を利用したデータ取得は、次年度に持ち越す計画であり、実施後、データ解析を行い残留ひずみについて検討及び成果報告を行っていく予定である。今後、一括してデータ解析を行うプログラム開発の取り組みは、2次元のエネルギー分布図から1次元のラインプロファイルデータを取り出し、解析ソフトであるOriginとも連動する自動プログラムとして開発を継続予定であるが、開発にあたり予算は別予算ですすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
SPring-8での計測が中止となったことから、本年度の予算であった利用料及び旅費が不要になった。また、成果発表はオンラインによる講演会実施であったため、旅費が不要になった。これらのことから予算の一部を次年度に繰り越した。繰越した予算は未達であるSPring-8での測定の実施ため、利用料及び旅費として使用する予定である。
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