本研究では、純曲げ区間における結晶の回転と残留ひずみの解析を目的として、結晶方位が明らかなマグネシウム(Mg)単結晶を準備して4点曲げ負荷時のラウエ測定を実施した。 令和元年度と令和3年度に大型放射光施設(SPring-8)において透過ラウエ法により各回折斑点を取得し、各斑点の回折X線プロファイルから延性損傷評価を行なった。評価を行なうにあたり実験のため新たに必要となった4点曲げ試験用治具や曲げ試験操作システムの開発・改良に取り組んだ。また、回折斑点データの一括処理のため、Pythonプログラムの開発にも取り組み、取得した膨大な量のデータの解析を短時間で処理できるようにした。これらの開発により各回折斑点の積分強度、半価幅及び格子ひずみを効率的に解析できるようになった。その結果、純曲げ区間の残留ひずみ分布を定性的に示すことができた。しかしながら、測定精度という点で課題が残ったため、カメラ長を変更するなど、新たな検討を追加した。さらに、令和2年度から走査型電子顕微鏡(SEM)内に挿入可能な超小型4点曲げ試験機を開発に着手し、北海道大学設置されているSEM-電子線後方散乱回折(EBSD)設備を利用してMg単結晶の結晶回転による表面組織の逐次変化の測定を追加実施した。開発した超小型曲げ試験機は他の材料でも活用できるため、曲げ加工時の新たな組織変化を明らかにすることが期待できる。 以上により、本システム・評価が有用であることを確認するとともに残留ひずみ分布を示すことができた。
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