研究課題/領域番号 |
19K04067
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
大下 賢一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60334471)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 相変態 / 変態塑性 / 構成式 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,SCM440 およびS45C材に対してオーステナイト領域において引張・圧縮/ねじり負荷しつつ自然冷却中の温度およびたわみを同時に測定し,負荷方向の違いがパーライト変態およびベイナイト変態時の変態塑性挙動に与える影響について実験的に検討した.その結果,引張・圧縮応力とせん断応力での二軸応力を負荷した際には引張・圧縮方向の変態塑性ひずみが促進されることがわかった.また,ベイナイト変態とパーライト変態では変態挙動の負荷方向依存性に違いがみられることが分かった. 次にオーステナイト相で予め塑性変形を加えたS45Cに対して曲げ負荷しつつ自然冷却を行い,塑性変形がパーライト変態塑性挙動に及ぼす影響についても再検討した.さらに得られた結果をもとに研究代表者らが提案した静水圧依存型構成式を汎用有限要素解析ソフトAbaqusに新たにコーディングし,解析を実施した.これによると,S45Cのパーライト変態について静水圧依存型構成式を用いることにより,一方,SCM440のベイナイト変態については古典的な異方性降伏関数を用いることにより変形挙動を定量評価できることが分かった.しかし現時点では両挙動を一つの構成式で定式化することが出来ておらず,次年度へ向けての課題である.今後,上記現象を表現可能な構成式を求めることにより,引張・曲げ応力を板材に負荷するホットプレス過程を模擬した実験結果に対しても,より精緻なシミュレーションが可能となり,試行錯誤的なものづくりから試行錯誤レス(トライレス)への移行が促進される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多軸(引張/圧縮・ねじり二軸,曲げ)応力下において,高温状態から急速冷却した時に生じる固体間の相変態(パーライト変態,ベイナイト変態など)に及ぼす予塑性変形の影響を明らかにするために,昨年に引き続き以下の検討を行った. 実験に先立ち,加熱・冷却炉用温度制御装置を新規購入した.従来の制御装置は本学の他研究室と共有していたため,実験終了後/開始前に制御装置の取り外し/設置・調整が必要となり大きな負担となっていた. 昨年に引き続き,S45CおよびSCM440材に対してオーステナイト領域において,引張りとねじり,または圧縮とねじりの2軸応力下におけるパーライトおよびベイナイト変態過程で生じる変態塑性ひずみを計測した.さらに,オーステナイト相で予め塑性変形を加えたS45Cに対して曲げ負荷しつつ自然冷却を行い,塑性変形がパーライト変態塑性挙動に及ぼす影響についても再検討した.これを基に昨年度提案した変態塑性挙動に対する静水圧応力依存型構成式の高度化を図った.この構成式の妥当性を検証するため,これを有限要素解析ソフトAbaqusにコーディングし,得られた実験結果と有限要素法による解析結果を比較・検討した.これらによると変態塑性挙動の負荷方向依存性はパーライト変態とベイナイト変態において大きく異なり,両挙動を表現可能な構成式を求めるに至っていない.本研究課題の主目的であるホットプレス過程に対するより高精度な熱処理シミュレーションの実現のためには構成式の見直しが必要である.今後は予塑性変形下における変態塑性試験についても実施し,塑性(予塑性)が変態誘起塑性変形に及ぼす影響について定式化を試みると同時にホットプレス過程の熱弾塑性シミュレーションの実施についても検討する.
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり,現時点では異なる相変態挙動を定量可能な構成式を見つけるに至っていない.そこで構成式を改良しつつ,それを汎用有限要素解析ソフトAbaqusにコーディングし直す必要がある.また予塑性変形下における変態塑性挙動に関する実験データが不足しているため,引き続き実験についても実施予定である.まずは,S45Cに対してオーステナイト状態下において塑性応力を負荷・除荷後,相変態開始温度直前に弾性応力を与え,高温状態から冷却した時に生じる固体間の相変態に関する各種パラメータを取得し,状況によってはSCM440についても検討する.最終的に得られた結果を基にした構成式の高度化とともに,ホットプレス過程の変形シミュレーションの確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額として334,377円が生じた.これは初年度2月に単年度契約した解析用ソフトウエアを今年度2月に更新しなかったことが大きい.ただし,今年度は解析ソフトウエアの更新を予定しているため,年間ライセンス料金として686千円,必要となる.また,学術発表がオンライン開催となっているため,旅費が計上されていないことも未使用額が生じた要因である. 今年度は上記ソフトウェアライセンス更新に加えて,8. で示した実験で使用する試験片を外注予定である.
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