研究課題/領域番号 |
19K04074
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
亀尾 佳貴 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (60611431)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨代謝 / 骨リモデリング / 力学的適応 / in silico実験 / バイオメカニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、骨代謝・リモデリングにおける微視的な分子・細胞の複雑な相互作用と巨視的な組織・器官の適応変化とを関連付けた数理モデルを構築することにより、動的な力学的負荷に応じて骨組織内部で生じる細胞間シグナル伝達、個々の骨構成細胞動態、骨形態変化をコンピュータ上で同時観察することを可能にするシミュレーション基盤の構築を目指している。以下に、本年度中の主な研究実施内容と、得られた成果をまとめる。 1.骨リモデリング駆動力としての間質液流れの妥当性評価 骨への動的な力学的負荷は骨形成を促進させることから、骨細胞に作用する間質液の流れが、骨リモデリングを駆動する力学刺激として働いているとの仮説を立て、その妥当性を検証した。マウス尾椎に対する繰返し荷重負荷実験により得られた海綿骨表面における骨表面移動速度の分布と、多孔質弾性論に基づくシミュレーションにより得られた骨組織内部における間質液の流速分布を比較した。その結果、両者の関係は、荷重周波数に依らずほぼ一意に定まることが示され、骨リモデリングが間質液の流れに応じて制御されている可能性が示唆された。 2.骨リモデリングにおける骨損傷の影響の数理モデリング 微小き裂などの骨損傷は、骨の剛性を低下させるとともに、骨細胞のアポトーシスを誘導する。そこで、骨損傷がリモデリングによる骨形態変化に及ぼす影響を調べるため、連続体損傷力学に基づいて損傷変数を導入し、骨損傷の蓄積による骨組織のヤング率の低下と、骨細胞のアポトーシスによる細胞数密度の低下を数理モデルとして表現した。単純な形状を持つ骨梁を対象とし、構築した数理モデルの基本的な特性を調べたところ、骨のヤング率の低下は骨形成を引き起こし、逆に、骨細胞密度の低下は骨吸収を引き起こすことが示され、両者のバランスがリモデリングによる骨形態変化に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海綿骨における骨吸収・骨形成の空間分布と間質液の流速分布は、負荷する繰返し荷重の周波数に依らず定まることが示されたことから、両者の関係を動的な力学的負荷に対する骨リモデリング則として定式化し、骨リモデリングのシミュレーション基盤に組み込む準備が整った。また、骨損傷を数理モデル化することにより、ターゲットリモデリングと呼ばれる骨損傷を修復するための重要な骨リモデリング過程を表現するための基礎が完成した。よって、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した骨リモデリングの数理モデルに、動的な力学的負荷に対する骨リモデリング則と骨損傷の数理モデルを組み込むことにより、骨リモデリングのシミュレーション基盤を完成させる。これを用いて、繰返し荷重下における骨リモデリングのin silico実験を行い、コンピュータ内で詳細な骨代謝動態を観察するとともに、力学環境に適応した健全な骨組織を維持するための最適な条件を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大のため、参加を予定していた国際会議や国内学会がすべて中止、延期、またはオンライン開催となった。さらに、感染拡大防止の観点から、予定していた高性能ワークステーションの購入を見送った。そのため、これらに関連する旅費や物品費に相当する繰越金が発生した。 次年度は、骨リモデリングの大規模シミュレーションを実施するため、分子・細胞スケールから組織・器官スケールまでの膨大な時空間データを一括かつ高速にハンドリングするための高性能ワークステーションを購入する。
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