研究課題/領域番号 |
19K04075
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三上 欣希 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (40397758)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水素割れ / 水素拡散 / ミクロ組織 / 微視的応力 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究課題で構築した数値解析手法を活用し,二相ステンレス鋼の母材および溶接金属における拡散性水素の集積挙動の数値解析を実施した.すでに破面観察および断面観察により確認できる割れ発生位置と,数値解析により明らかになる応力集中,水素集積位置が定性的に対応することが確認できていることから,新たにこれらの挙動に及ぼす影響を数値解析を活用して検討した. 特に,二相ステンレス鋼の水素割れ発生特性に影響を及ぼすと考えている微視組織因子として,微視組織形態,分率,構成二相の強度特性に注目し,これらを仮想的に変化させた数値解析により,影響の程度を検討した.これにより,以下の結果を得た.(1) 微視組織形態は負荷方向との関係により応力集中および水素集積位置に影響する.二相ステンレス鋼の母材と溶接金属とでは,微視組織の分布形態が大きく異なり,仮に,構成する二相の特性が全く同じであったとしても,分布形態によって水素我発生特性が異なる可能性がある.このような観点で因子を切り分けて検討することができることも数値解析手法の意義である.(2) 組織分率は負荷時に発生する応力レベルに影響を及ぼすが,微視組織の分布形態が同じである限り,応力集中および水素集積位置にはほとんど影響しない.(3) 構成二相の強度特性の差が大きくなるほど,応力集中および水素集積は顕著になる.これらの結果は,実験によって得られた,二相ステンレス鋼の母材と溶接金属との水素割れ発生特性の差異の傾向と定性的に対応することが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに実施していた研究課題を継続・発展させた研究が実施できている.前課題で構築した手法を活用し,諸因子の影響評価を進めており,新たな試験条件,検討課題などに関する着想も得られている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,すでに構築済みの数値解析手法を活用した諸因子の影響評価を推進する.その結果をふまえて,追加の試験条件などを考案していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度まで実施していた科研費基盤研究(C)から継続する研究課題であり,今年度は当該科研費で導入した装置を活用することで研究を推進することができたため.また,それに加えて,これまでの研究成果の整理・報告し,議論の機会を持つことも重視し,今後の方針を明確にすることができたので,次年度以降,新たなアプローチも試みていく.
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