研究課題/領域番号 |
19K04079
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
田中 達也 同志社大学, 理工学部, 教授 (70434678)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超微細結晶 / 強ひずみ加工 / 加工性 |
研究実績の概要 |
靭性・強度の向上など金属材料に優れた特性を与えるには結晶粒微細化が必要不可欠である。結晶粒微細化の方法として、巨大ひずみ付与法である強ひずみ加工法が注目されているが、結晶粒径が 1μm 以下の超微細粒になると延性が著しく低下してしまう。これは、降伏応力の増大と加工硬化能の低下によって塑性不安定性が早期に達成されてしまうことが原因であり、二次加工性の改善が課題と認識されている。一方、超微細結晶材料のくびれ後の局部延性は粗粒材よりも高い場合もある。つまり、材料の変形能そのものが失われたわけではなく、くびれが生じないような圧縮変形では十分な変形能を示す可能性がある。この原因は超微細結晶組織中に含まれる高密度の結晶粒界における粒界すべりによる応力緩和機構が考えられる。さらに硬質相と軟質相から構成される二相合金では異相界面におけるすべり緩和機構が生じる可能性がある。そこで本研究では硬質な第二相を有する超微細結晶材料が本質的に持つであろう圧縮加工性に注目した。 半凝固二相アルミニウム合金を使う前に、今年度はその予備試験として、単純組織で均質な微細化が可能な純銅を用いた。強ひずみ加工の1つであるECAP法に結晶粒径が0.4ミクロンまで微細化した後に、圧縮試験と引張試験により展性と延性を比較した。その結果、超微細化組織材料は圧縮変形後に高い伸びを示した。さらに、UFG材料は結晶粒が微細で均一であるという観点から超塑性変形である可能性があるため、超塑性の指標の1つであるひずみ速度感度指数(m値)を算出した。超塑性変形におけるmの値は0.3以上と言われているが、0.067になり、超塑性変形ではないことを示した。冷間圧延を模擬した円筒工具試験を用いて圧縮率を測定した結果、超微細組織材料は粗粒材よりも破断までの高い圧縮率を示し、加工性が優れていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では半凝固二相アルミニウム合金の適用を予定している。現在、材料組織の調整と結晶組織の超微細化に適した強ひずみ加工条件の抽出に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
二相アルミニウム(Al-Si)合金について、成分調整と半凝固プロセス条件により、系統的に第二相率と凝固組織率を変化させる。さらに第二相が微細分散した超微細組織の形成に適した初期組織の条件を探索する。また、圧縮加工率に及ぼす加工条件および組織の影響を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
材料費が予定していたよりも安く購入できたためである。次年度は実験条件を増やして、材料費の増額を予定している。
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