研究課題/領域番号 |
19K04082
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
西川 嗣彬 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (20771843)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 疲労 / 微小疲労き裂 / 画像相関法 / 破壊力学 |
研究実績の概要 |
力の繰返しによって起こる金属の疲労破壊は、現在でも様々な機器の主要な破損原因の一つであり、その防止は安全性と経済性の両面において重要である。金属疲労は、力の繰返しに伴い、ミクロなき裂が発生し、徐々に成長することによって起こる。また、この疲労き裂は、切欠き底のような応力の集中する形状不連続部に発生する。したがって、機器の疲労寿命を理解する上では、切欠き底で発生したき裂の成長挙動を把握、予測することが重要となる。しかしながら、表面観察に頼る従来の方法では、発生したき裂の材料内部に向かう成長挙動を把握することが困難であったため、切欠き部におけるミクロな疲労き裂の挙動はほとんど調べられてこなかった。 本研究は、顕微鏡画像だけでなく、画像相関法を活用することで、切欠き底におけるミクロな疲労き裂の成長挙動の把握を可能にするものである。本研究では、熱処理を施した炭素鋼を対象に、切欠きを付与した疲労試験片を作成し、デジタルマイクロスコープを用いて、切欠き底におけるミクロな疲労き裂の発生・進展挙動の連続観察を行った。観察では、画像相関法によって、き裂サイズと直接相関のある、き裂の開口変位を高精度に実測することに成功し、従来難しかった切欠き底における微視的なき裂の成長挙動を把握することを可能にした。さらに、切欠き底におけるき裂開閉口挙動の計測方法を確立した。これらの技術を活用することで、切欠き底における微小なき裂の成長速度の予測が可能となり、形状不連続部の疲労寿命予測の高精度化に繋がることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、19年度には切欠きを有する試験片の疲労試験を行って、切欠き底におけるミクロな疲労き裂の発生・成長挙動を顕微鏡により連続観察する手法を確立するとともに、画像相関法により実測するき裂開口変位が、き裂成長評価のパラメータとして利用出来ることを実証することに成功した。これらの成果は、機械学会M&Mカンファレンス2019において発表され、優秀講演表彰を受賞しており、学会からも認められる結果が得られていると言える。以上より、この研究は順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、切欠き底の疲労き裂成長挙動を予測するための力学モデルの構築である。19年度には、この研究の骨格となる計測手法のアイデアの検証を完了した。引続き、20年度には、確立した計測方法、評価方法を活用して、体系的な疲労き裂成長データの取得を進める予定である。データの取得では、最終的なモデル化の際のインプットパラメータとして想定している、①切欠き形状、②材料の強度レベル、③材料の微視組織を変えた複数の種類の試験片を作製し、切欠き底における微視的な疲労き裂の成長データを取得する予定である。20年度までに体系的に取得したデータベースを詳細に分析することで、21年度には、破壊力学に基づく寿命予測モデルの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
加工費用の見積もり等で当初の計画から若干の誤差が生じたため。繰越し額は、20年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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