力の繰返しによって起こる金属の疲労破壊は、現在でも様々な機器の主要な破損原因の一つであり、その防止は安全性と経済性の両面において重要である。金属疲労は、力の繰返しに伴い、ミクロなき裂が発生し、徐々に成長することによって起こる。また、この疲労き裂は、切欠き底のような応力の集中する形状不連続部に発生する。したがって、機器の疲労寿命を理解する上では、切欠き底で発生したき裂の成長挙動を把握、予測することが重要となる。しかしながら、表面観察に頼る従来の方法では、発生したき裂の材料内部に向かう成長挙動を把握することが困難であったため、切欠き部におけるミクロな疲労き裂の挙動はほとんど調べられてこなかった。 本研究は、顕微鏡画像だけでなく、画像相関法を活用することで、切欠き底におけるミクロな疲労き裂の成長挙動の把握を可能にするものである。19年度には、疲労試験片の狭隘な切欠き底を、デジタルマイクロスコープによる連続観察と画像相関法を用いることにより、き裂の開口変位を高精度に実測することに成功し、従来難しかった切欠き底における微視的なき裂の成長挙動を把握することを可能にした。20年度には、切欠き形状、材料の強度レベル、材料の微視組織を変えた複数の種類の試験片を作製し、切欠き底における微視的な疲労き裂の成長データの取得を行った。21年度には、切欠き底における微小疲労き裂の成長データを拡充するとともに、弾塑性破壊力学による寿命予測手法についての検討を進めた。これらの技術とデータを活用することで、切欠き底における微小なき裂の成長速度の予測が可能となり、形状不連続部の疲労寿命予測の高精度化に繋がることが期待できる。
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