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2019 年度 実施状況報告書

バックキャスティング型材料設計を志向した自己治癒セラミックスのバーチャルテスト

研究課題

研究課題/領域番号 19K04088
研究機関横浜国立大学

研究代表者

尾崎 伸吾  横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20408727)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード自己治癒材料 / セラミックス / 有限要素法 / バーチャルテスト
研究実績の概要

本研究では,自己治癒セラミックスの社会実装を達成するために,構造部材としての要求性能と材料の微視組織条件との関連付けを行うことのできるバックキャスティング型材料設計スキームの確立を目指す.その実現のため,初年度は,損傷―自己治癒構成モデル”および“破壊統計の数値解析手法” に関するバーチャルテスト(仮想数値実験)の方法論の基礎を構築した.
まず,損傷―自己治癒構成モデルについて,これまでに対象としてきたアルミナ/炭化ケイ素複合材以外にも,例えば世界的に注目され始めているMAX相セラミックスにも適用できるように拡張した.ここに,MAX相セラミックスは靭性が高く塑性変形を生じるため,非古典弾塑性論(下負荷面の概念)を導入することで対応した.また,自己治癒セラミックスでは,炎症・修復・改変期を通し,酸化生成物によるき裂充填機能と治癒部の高強度化を達成している.本現象を状態変数の発展則として組み込むにあたり,アレニウス式およびワグナー則に従った酸化反応速度論を採用した.これより,変動する温度・酸素分圧環境下での強度回復挙動の高精度シミュレーションを可能とした.さらに,自己治癒セラミックスの強度回復の程度を定量的に評価するための逆解析手法を構築した.
他方,数値シミュレーションと同時並で,焼結条件を制御したアルミナの強度試験と組織観察を実施した.特に,3水準の焼結温度条件下でのワイブル分布を取得し,破壊強度に関する現有データベースの拡充を図った.また,有限要素解析に基づく破壊統計の予測精度の検証を繰り返し,破壊統計の数値解析手法に用いる確率密度関数を規定した.2年目の研究計画を先取りし,アルミナを対象にサイズ依存性を加味した破壊統計の数値シミュレーションを実施するとともに,提案数値解析手法の有効性を示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに,当初計画通り進行している.1年目には,種々の自己治癒セラミックスを対象とした弾塑性―損傷―治癒構成モデルを構築する計画であったが,非古典弾塑性論の概念を導入することにより,これを達成した.また,MAX相セラミックスのwedge splitting testの数値シミュレーションに提案構成モデルを適用し,その妥当性の検証も終えている.スピンオフ成果として,強度試験,アコースティックエミッションおよび数値シミュレーションを組み合わせた逆解析手法を提案した.本手法によると,これまで困難であった自己治癒セラミックスの強度回復特性の定量的評価が可能となる.これらの内容については,国際会議で発表するとともに,投稿論文としてまとめ終えた.
破壊統計の数値解析手法については,焼結条件を制御したアルミナの強度試験と組織観察を実施した.3水準の焼結温度条件下での破壊強度のワイブル分布を評価するとともに,数値シミュレーションで必要となる微視組織情報(欠陥のサイズとアスペクト比,粒径,相対密度)の確率密度関数を規定した.このように,当初計画通り,構造部材としての要求性能と材料の微視組織条件との関連付けを行うことのできるバックキャスティング型材料設計へ向けた準備を終えている.なお,サイズ依存性を加味した破壊統計の数値シミュレーションを既に実施し,その結果は学術論文に掲載されている.

今後の研究の推進方策

2年目には,種々の試験片を構造部材と見立てた有限要素解析を実施する予定である.具体的には,異物衝突損傷や繰返し引張損傷を対象とし,エンジン内を想定した雰囲気環境での治癒挙動をシミュレートする.得られた結果を基に,“サイズ依存性を加味した破壊統計”,“強度回復の時間依存性”ならびに“繰り返し治癒性”の観点から部材としての要求性能を評価する.さらに,力学的・化学的に整合性の取れたシミュレーションの実現のために,既に提案している構成モデルの熱力学的制約条件についての検討を行う.特に,損傷⇔自己治癒の競合過程を対象に新たな散逸不等式のフレームワークを提案し,発展則の整合性を示す.また,数値シミュレーションと並行して,強度試験と組織観察を継続する予定である.
3年目にはデータベースとの比較を行うことで,構造部材としての要求性能と微視組織条件との関連付けを行えていることを実証する.またジェットエンジン用部材を対象に,要求性能を満足し得る微視組織条件をバックキャストし,焼結プロセスまで遡った組織設計・制御指針,自己治癒エージェントの選定・複合指針としてまとめる予定である.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] デルフト工科大学(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      デルフト工科大学
  • [雑誌論文] Finite element analysis of the size effect on ceramic strength2019

    • 著者名/発表者名
      Takeo, K., Aoki, Y., Osada, T., Nakao, W., Ozaki, S.
    • 雑誌名

      Materials

      巻: 12 ページ: 1-13

    • DOI

      10.3390/ma12182885

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Advanced fiber reinforced self-healing ceramics for middle range temperature2019

    • 著者名/発表者名
      Nakao, W., Hayakawa, T., Yanaseko, T., Ozaki, S.
    • 雑誌名

      Key Engineering Materials

      巻: 810 ページ: 119-124

    • DOI

      10.4028/www.scientific.net/KEM.810.119

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 特別解説 有限要素法によるセラミックス強度のばらつきの評価2019

    • 著者名/発表者名
      尾崎伸吾
    • 雑誌名

      耐火物技術協会

      巻: 71 ページ: 502-508

  • [学会発表] セラミックスの破壊統計に関する有限要素解析:焼結条件の影響2019

    • 著者名/発表者名
      尾崎伸吾,青木祐也,長田俊郎
    • 学会等名
      計算工学講演会
  • [学会発表] Finite element analysis on scatter of strength and self-healing behavior in alumina/SiC composites2019

    • 著者名/発表者名
      Shingo Ozaki, Marika Nakamura, Kyohei, Takeo, Osada Toshio
    • 学会等名
      7th International Conference on Self-Healing Materials
    • 国際学会
  • [学会発表] Finite element analysis of the self-healing behavior in alumina/SiC composite: Effect of compound ratio of self-healing agent2019

    • 著者名/発表者名
      Aiko Watabe, Osada Toshio, Kyohei Takeo, Shingo Ozaki
    • 学会等名
      7th International Conference on Self-Healing Materials
    • 国際学会
  • [学会発表] Numerical analysis of competitive behavior between healing and crack propagation in fiber-reinforced self-healing ceramics2019

    • 著者名/発表者名
      Naoki Kanda, Kyohei Takeo, Wataru Nakao, Shingo Ozaki
    • 学会等名
      7th International Conference on Self-Healing Materials
    • 国際学会
  • [学会発表] Constitutive model for self-healing ceramics and its application to finite element analysis2019

    • 著者名/発表者名
      Shingo Ozaki
    • 学会等名
      5th German‐Japanese Workshop on Computational Mechanics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 自己治癒セラミックスの有限要素解析: wedge testの解析2019

    • 著者名/発表者名
      渡部 愛子,長田 俊郎,尾崎 伸吾
    • 学会等名
      日本機械学会 第32回計算力学講演会(CMD2019)
  • [学会発表] セラミックスの破壊統計に関する焼結温度の影響:有限要素法による強度ばらつきの予測2019

    • 著者名/発表者名
      山形 一輝,長田 俊郎,尾崎 伸吾
    • 学会等名
      日本機械学会 M&M2019 材料力学カンファレンス

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公開日: 2021-01-27  

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