研究課題/領域番号 |
19K04096
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
久森 紀之 上智大学, 理工学部, 教授 (80317510)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | チタン合金 / 積層造形 / 疲労特性 / 組織・結晶構造 / 変態プロセス / 関節運動器 |
研究実績の概要 |
患者個々の関節運動器の骨格や症状等に合わせた高生体適合性カスタムメイドインプラントが求められている.現在の整形外科用3D造形関節運動器デバイスは,造形時の残留欠陥が疲労強度を著しく低下させるために実用範囲が極めて限定されている.加えて,骨伝導能に乏しい金属インプラントには,骨と協調・融合する機能性の付与が不可欠であり,造形材でその機能の検討や効果の検証はなされていない. 本研究では,チタン合金の3D造形カスタム関節運動器デバイスを骨形状3D CADデータから直接造形し,短時間高周波焼入れとショットピーニング処理で組織のナノ結晶化と結晶相変態による耐疲労強度化プロセスの確立及びプラズマ溶射法による骨伝導能付与技術の一体化創製技術の構築を目的とし立案する. 電子ビーム積層造形機を用いて人工股・膝関節の3D-CADデータを基に,Ti-6Al-4V合金の造形を行った.ここでは,カスタムメイドを念頭にした造形,すなわち,一部分が細かったり,太かったりなど既存品では対応できない症例を想定した造形を行う.加えて,既存技術を生かした内部は緻密,一部表面はジオメトリなポーラス構造とし,弾性率の低減を行う.すなわち,長期埋入で生じるstress shieldingの抑制を視野に入れている. しかしながら,このような形状部位にチタン合金を適用すると,強度の面で不十分であることが考えられる.したがって,チタン合金に替わる素材として,Co-Cr合金を加えて検討することとした. 本年度は,実用課題である疲労特性の評価,具体的にはき裂進展特性について評価した.加えて,短時間高周波焼入れとショットピーニング処理で組織のナノ結晶化と結晶相変態による耐疲労強度化プロセスの確立するために,2段処理のショットピーニング処理条件の選定を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 コロナ禍に伴い約半年間の研究停止を余儀なくされた.したがって,研究を行うに必要な積層造形材の骨モデルのCAD作成から樹脂造形機を用いた造形モデルの作成までは至っていない.ただし,骨折治療デバイスの造形モデルの作成および造形について実施することができた. 加えて,比較材としたCo-Cr合金の鍛造材を用意し,基本的な特性・物性までは評価できている一方,関節摺動として必要な疲労特性や摩耗特性の評価までは至っていない.ただし,疲労および摩耗特性向上を目指した表面処理,すなわち,ショットピーニング処理を行い,各種基本特性の評価を行うことができた.. 加えて,チタン合金造形材の疲労特性向上および基本的疲労特性評価については,き裂進展特性を評価することができ,既存チタン合金との比較から,造形材の関節運動器への適用の可能性を考察することができたことは評価に値する.
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今後の研究の推進方策 |
Ti-6Al-4V合金の造形材に対して,疲労強度向上を目指した短時間高周波焼入れとショットピーニング処理によるハイブリット表面改質処理を行う.加えて,同処理材の疲労特性を評価する.すなわち,マルテンサト変態が組織の微細化に寄与し,結果として疲労特性の向上を目指す.加えて,造形欠陥の除去あるいは減少の観点からも高力学化の向上を目指す.とくに,渦電流が欠陥周りに集合することで,組織の再溶融・再凝固化が作動し,残留欠陥が除去・消滅するプロセスの構築と,その機序を明らかにする.空間的・時間的高倍率な微細組織の評価は,既設のX線CT,レーザ顕微鏡,FE-SEM(EDX), AFMを用いた詳細な観察及び,マルテンサト変態によるミクロ結晶方位分布をEBSD(既設)から明らかにする. また,ショットピーニング(SP)を用いた塑性ひずみによる残留欠陥の消滅(二段階処理)と圧縮残留応力付与による耐疲労強度の向上メカニズムについて考察・検討を行う.短時間高周波焼入れした造形材で消滅しきれない欠陥に対して,SPによる塑性ひずみで残留欠陥を完全に消滅させること及び,マルテンサイト変態による更なる組織の細粒化を誘導する二段階処理プロセスを構築する.同時に圧縮残留応力付与による硬さと強度向上が耐疲労特性を高める高力学化の構築も範疇とし,その効果を曲げやねじり疲労試験から明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,コロナ禍のため学会発表などが中止になり,それに用意した旅費の使用が抑制された. 関節摺動部材のモデル作成に用いる樹脂造形に必要な消耗品が必要になることから,これら消耗品の使用に充当する.
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