研究課題/領域番号 |
19K04097
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軟骨再生 / アルギン酸 / 細胞ファイバー / 編み構造 |
研究実績の概要 |
培養軟骨移植術において,患者により異なる損傷部の形状に応じた培養軟骨の成形と力学機能の早期獲得に不可欠な組織構造の構築が求められている.現在,軟骨細胞を播種するスキャホールドを成形することで組織構造の構築が試みられているが,細胞活性の低下による壊死やスキャホールドによる組織形成の阻害が問題となる.そこで本研究では,欠損形状に合わせた形状での組織構築および細胞活性の長期維持を可能とする培養軟骨作製技術として,軟骨細胞封入アルギン酸ファイバーの集積による軟骨網目構造体の作製技術を開発した.湿式で細胞封入ファイバーの紡糸と集積を可能とする装置を開発し, 25×25×1 mmの軟骨細胞封入アルギン酸ファイバーの網目構造体を作製した.網目構造体の形状や内部構造はファイバーの集積パターンの変更により任意に調節可能である.また,網目構造体と同じ体積と細胞密度の細胞封入シートを作製した.作製直後の細胞生存率,培養7および14日後のECMの分布および産生量を比較することで,網目構造体の有効性を評価した.作製直後の網目構造体とシートの細胞生存率は83.1%および84.7%であり,網目構造体の作製おいて培養可能な細胞生存率が維持されることが示された.培養に伴う基質の観察では,網目構造体では全層にわたるECMの産生が確認されたが,シートでは表層に基質産生が集中し内部で基質産生が低下していることが確認された.培養後のDNAおよびグリコサミノグリカン(GAG)の測定結果より,網目構造体のDNA量およびGAG量はシートよりも高くなった.これらの結果から,作製した網目構造体では,ファイバー間への栄養供給による細胞活性維持と長期培養による組織構造構築が可能であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は,軟骨細胞/アルギン酸ファイバーを集積することで3次元編み構造体を作製する装置の開発と軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体の作製技術を確立することであった. 開発した3次元編み構造体の作製装置では,3つのステッピングモータを用いることで軟骨細胞/アルギン酸溶液を射出するノズルのXYZ軸方向の移動制御を可能とし,塩化カルシウム水溶液中でファイバー化させた軟骨細胞/アルギン酸複合体を剣山型のターゲットに編み構造として集積した. 作製した軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体において,軟骨細胞のファイバー内での均等な分布と,網目構造の維持を確認した.また,作製した軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体を培養し,その細胞活性の維持と細胞外基質の産生を確認した. 以上より,概ね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
令和1年度に開発した3次元編み構造体作製装置を用いて,培養軟骨組織の3次元構造解析と編み構造体作製条件の最適化を試みる.作製した3次元構造体の培養によりアルギン酸ファイバー内に産生された細胞外基質量の生化学分析と組織染色観察を行い,3次元編み構造体内での細胞活性を評価する.また,多光子励起顕微鏡によるコラーゲン構造の3次元解析により,生体軟骨の基質構造であるコラーゲン構造の評価を行う.これらにより,培養により産生された細胞外基質の構造が網目構造を形成するかを評価し,網目構造化に必要なアルギン酸濃度,細胞密度,細胞分布,ファイバー径および密度などの最適化を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
軟骨細胞/アルギン酸3次元編み構造体の作製装置の開発において,順調に装置の動作確認やファイバー作製条件の探索が進んだため,当初予定していた装置の開発のための消耗品代や評価のための原材料費などが低く抑えられた.
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